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BPIA 例会【2019年度第4回】(2019/8/21)『アフターデジタル~中国から学ぶ日本型DXのあり方』

【講演資料】

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【レポート】

  こんにちは。BPIA広報委員会の石田です。今回は8月21日(水)に日本オラクルさんのセミナールームで開催された今期四回目のBPIA例会についてレポートします。

 今回の例会では、株式会社ビービットの執行役員/エバンジェリストである宮坂祐氏をお招きして、「アフターデジタル~中国から学ぶ日本型デジタル・トランスフォーメーションの在り方~」というテーマでご講演いただきました。

 2019年3月25日に日経BP社より発売された「アフターデジタル」。デジタル先進国の中国でいま起きている「データ×顧客体験」の新しいビジネスシステムを解説し、日本企業としての向き合い方を示唆している書籍です。現在、中国ではデジタルを活用した極めて品質の高いサービスが生まれてきています。

 変化は突然現れ、急に加速します。宮坂氏がスライドで見せてくれたのは、1900年のニューヨークの街並みの写真と1913年のニューヨークの街並みの写真です。このふたつの写真には明確な違いがあります。わずか13年の間に人々の移動手段が馬車から自動車へと変化したのです。変化は急速に加速します。興味深かったのが「視聴率30%超えのテレビ番組の年間本数」の事例。1979年は年間1860本あったものが、2016年にはわずか3本にまで減少しました。

 私たちの現在の生活において、大きな変化をもたらしているものといえばスマートフォンです。わずか十数年で私たちの生活を支配するまでになりました。現在では、ビジネスや生活における体験のあらゆるタッチポイントがデジタルに包み込まれている状態です。これが「アフターデジタル」です。

 すでにオフラインがない世界に成長しているのが、中国です。中国都市部では「デジタルが生活で使われない場面がない」レベルでデジタル化が進展しています。その中心にあるのが、ALIPAY(以下、アリペイ)とWeChatPAY(以下、WeChatペイ)です。このふたつの決済アプリが中国人の多くの生活のインフラ化している

 アリペイ、WeChatペイは、サービスを開発するサービサー企業に出資し提携。ユーザー数と接触回数を増やしています。シェアリング自転車は好きなところで乗り捨て可。ユーザーのあらゆる行動がユーザーIDと紐づきます。現実にはシェアリング自転車「モバイク社」は年間数十億赤字を出していると思われますが、「1.便利なサービスをプラットフォームにのせておきたい」「2.移動データがプラットフォーマー的には美味しい」という理由で事業が継続しています。投資の目的は黒字化ではなく、いかに多くのユーザーを集めるかなのです。

 アリババのネオリテールである「フーマー」は店舗から3キロメートル以内なら30分以内に配送するサービスを提供しています。これが非常に人気があり、中国の不動産のWEBサイトに「フーマー3キロ以内か」をセグメントできる機能もあるほどです。また、商圏のデータ分析をすることで、ある場所にフーマーを出店した場合どれくらい収益が出るかを予測することもできます。同じくアリババが提供する信用スコア「ジーマ信用」や、敗者サービスのユニコーン企業「DiDi」も顧客体験、従業員体験のサービスとして興味深いところです。

 中国では、決済プラットフォーマーをトップとして産業構造のヒエラルキーが生まれています。「決済プラットフォーマー→サービサー→メーカー」という構造です。この決済プラットフォーマーの位置にいるのが、アリペイとWeChatペイの2つということになりますが、仮に日本で同じ産業構造の変化が起こった場合、どの会社がヒエラルキーのトップの位置につくのでしょうか。大手の通信会社なのか、メガバンクなのか、新興IT企業なのか。実際に日本という国で実現できるかは別として、未だトップに立つ候補が見えないのが現実かもしれません。

 これら中国でのデジタル・トランスフォーメーションからいくつかの学びがあります。1つ、これまでのプロダクト中心のバリューチェーンからエクスペリエンス中心のバリュージャーニーへの変化。2つ、デジタルを活用して「属性」ではなく「状況」にターゲティングすることが成功の鍵であること。3つ、理想の顧客体験から逆算してモノや場所や体験を用意する、リアルとデジタルの関係性。4つ、タッチポイントを設計し、行動データを活用したUX改善ループをおこなうこと。

 宮坂氏のお話で私が特に印象に残ったのが学びの部分における「2つ、デジタルを活用して『属性』ではなく『状況』にターゲティングすることが成功の鍵であること」。「属性」のデータをセグメントすることのもう一歩先に、「状況」のデータのターゲティングがある。普段の自社の仕事からなんとなく動いていたことを「状況のターゲティング」という言葉がシンプルに腹に落ちた気がしました。

最後になりますが、宮坂様、会場をお貸しいただいた日本オラクルの宇木さん、BPIA事務局の川上さん、誠にありがとうございました。例会担当の田村さん今年度四回の例会、ありがとうございました。


【開催概要】

日時: 2019年8月21日(水)朝8:00〜9:30(受付開始 7:45〜)
場所: 日本オラクル株式会
オラクル青山センター 13F 会議室

外苑前駅 4B出口直結
タイトル: アフターデジタル~中国から学ぶ日本型DXのあり方
講師: 宮坂 祐(みやさか ゆう)氏
株式会社ビービット 執行役員/エバンジェリスト
対象: BPIA会員限定
参加費: 3,000円(朝食代込。当日申し受けます)
進行: 田村俊和(BPIA理事 例会担当)
株式会社日経BP読者サービスセンター 代表取締役社長

※「例会」は、BPIA会長、会員経営者、又は外部経営者知見者を講師に招き、グローバル時代の経営を様々な視点で議論し、相互研鑽とビジネス交流を図るBPIA会員限定の勉強会となります。
 

◎講演概要

デジタルがリアルを包み込むようになった現代において、オンラインとオフラインを分けずに一体として捉え、オンラインにおける戦い方や競争原理から考える「OMO(Online Merges with Offline)」という考え方が重要となります。本講演では日経BPから3月25日に刊行されベストセラーとなっている「アフターデジタル」で紹介されている中国の先進事例とその事例の背景にある仕組みを解説すると共に、日本企業がデジタルトランスフォーメーションを成功させていくためのヒントをご提供します。
 

◎講師プロフィール

宮坂 祐 (みやさか ゆう) 氏
株式会社ビービット 執行役員/エバンジェリスト

一橋大学法学部卒業後、2002年にビービット入社。コンサルタントとして、メディア、金融、通信、メーカー等のウェブ戦略立案・成果向上プロジェクトを数多く実施。2013年からビービットのエバンジェリストとしてCX/UXをテーマに多くのマーケティングイベントに登壇。2016年に金融財政事情研究会より「顧客を観よ~金融デジタルマーケティングの新標準」を刊行。ビジネススクールのGLOBISで思考系クラスの講師を務める。