21世紀型情報システムを考える-20世紀からの決別ー研究会 レポート 研究会 2013年度 研究会/講演会

【21世紀型情報システムを考える(第26回)研究会】~参加者コメント/感想

「もう手組みの時代ではない」は本当か? 開発ツール「Wagby」の発想から何ができるかまで」

贄 良則 株式会社ジャスミンソフト 代表取締役
2013年9月3日(火)16:00~19:00 /株式会社ヤマティー(西新宿)

◎講演概要: 26kai2近年に登場したすべてのキーワードが向かう先は、エンドユーザが主体性をもって自社のエンタープライズアプリケーションを超高速に開発するというゴールに向かっています。オブジェクト指向、フレームワーク、アジャイル開発、クラウド環境、DevOps、そしてBRMS。これら一つ一つの技術を組み合わせていくと、かつての大所帯での長期開発プロジェクトから、エンドユーザを巻き込んだ開発と運用一体型のプロジェクトへと変貌します。この、いわゆる「つくらない開発」時代を見据えた純国産の開発ツールとしてWagbyは登場し、これまで223社のお客様に活用されてきました。講演ではWagbyとはどういう思想に基づいた製品で、何を目指すのか、そしてWagbyによるビジネスチャンスとは何か。 ◎Wagby http://wagby.com/ 

018
◎参加者コメント ~株式会社アーク情報システム 馬込義明

 これまで業務システムの構築のために、様々な手法、ツールなどが登場してきた。しかし、細かいユーザの要望や時代の変化に対応するために、Javaに代表される汎用プログラミング言語を使うことになることが依然として多い。この汎用プログラミング言語は機械語、アセンブラ言語、手続き型言語/関数型言語、構造化言語、オブジェクト指向型言語と進化してきているが、どうも進歩が少ないと感じていた。その中で今回のテーマであるWagbyがどのようなインパクトを与えてくれるのか非常に興味を持っていた。
 今回の講師であるジャスミンソフト代表取締役の贄さんは、ご自身で根っからのプログラマーだとおっしゃっていた。そのプログラミング大好き人間の贄さんにして、このプログラマーの仕事をコンピュータで進化できないのは、どうしても納得いかないとおっしゃっており、私もかねてから同じように感じていた。過去にはCASEツールのような動きもあったのだが成功したとはいいがたい。しかし一からプログラミングしているのでは、開発がコストの低い海外に移ってしまうのは必然の帰結である。
 この現状を打開したいという贄さんの強い気持ちがこのWagbyというソフトウェアに現れている。Wagbyは必要な情報をパラメトリックに設定することで、システム構築するという方法である。発想としてはCASEツールに近いところがあるが、より現実的なアプローチをしているところがポイントだとおっしゃっていた。CASEツールのように完全を求めるのではなく、パラメトリックだけで実現できない処理は、カスタマイズによる追加開発および外部連携という方法をとっており、できないから使えないではなく、できるところを利用し不足するところは補うという考え方である。これによりWagbyの活用範囲を拡げることが可能になり、活用されれば進化することが可能になるので、より高度な開発ツールになる可能性を持っているとも言える。
 私は業務システム開発というものは、ユーザ業務と業務システムが工学的につながるのが理想だと考えている。Wagbyはシステム化対象をある程度限定することで、システム機能からソフトウェアの自動生成ができるようになっている。これはシステム設計と業務システムの工学的な同一性を保つことができるという解釈ができる。これを実現してさらに実績を上げていることは素晴らしいことであり、長年の贄さんの強い思いと努力があってはじめて実現できたのだと思う。その成果に賞賛を惜しまない。
 ここまで来ると、業務とシステム機能の適合性も視野に入れたくなる。ここを論理的に解決できれば、業務と業務システムが工学的につながる。これが未来の業務システムの一つのあり方であると私は信じて止まない。

018
◎参加者アンケート

・真の資産は設計情報を書き起こせる「人材」。同感です。

・ジェネレイティブプログラミングという考え方は初めて聞きました。Wagbyそのものは分かりませんでしたが、考え方は面白いと思います。基幹系業務システムは、産業ごとに標準的なプロセスができてきていると思います。SAPなどの影響です。Wagbyにおいても業務プロセスのパターンがあるのだと思っています。帳簿についてカスタマイズが多く行われている現状は変わるのでしょうか。

・システム開発業界の先端で特に日本勢の進む方向を示して下さる話。とても重要な話を聞くことが出来ました。当業界の人間ではないのですが、日本の発掘に寄与したいと考えており、応援したいと感じました。ありがとうございます。

・ありがとうございました。これまでのものを尊重しながらもそれらを融合し内製化(=「自立」であると考えます)へのきっかけとなるツールを進化させようとご努力されている姿勢に感銘いたしました。

・自社への内製化適用を検討する中で「Wagby」のお話が参考になりました。内製化に必要な人材に関する話は非常に納得感がありました。

・Wagbyを販売する代理店の立場ですが、とても分かりやすい内容でした。

・Wagbyの考え、思想などお聞きでき興味を持つことができました。機能について別に学んでみたいと思います。

・こういったツールが効果を発揮できるのは、ユーザ部門を情シス部門が卸せるところ、あるいは情シス部門を経営者が優先してくれるところであると感じます。また、大手ベンダーが採用しにくいのは、余剰人員を原価に反映させなければいけない事情ではないかと思われます。

・21世紀型情報システムの手掛かりと感じた。BPIAを実践の場とし、世に問うべきと思う。

※株式会社ヤマティー 会議室にて
26kai