会員コラム

企業再生とIT

村井 龍一氏

2010/01/25

私は縁合って昨年7月からBPIAに参加しております。毎回多くの学びがあるセミナーを開催頂き、感謝しています。今回本コラムに執筆させて頂く機会を頂きましたので自己紹介させて頂きます。

◆仕事

BPIAはIT関係の方が多くいらっしゃいます。私はITコンサルティングを主業務とする企業に勤めております。通常は下記のような業務と、そのための営業活動を行っております。

  • プロジェクトリーダとして主に流通業向けのシステム企画、設計、開発、運用
  • システム調査、BPR検討

顧客の事業戦略や業務のあり方を顧客と共に考え、適切な部品を組み合わせて開発する、というスタイルで業務を行っています。

ここではITコンサルティングでもちょっと変わった私の仕事の経験をご紹介します。企業再生案件のシステム調査です。企業再生をするときに、出資者(ファ ンドなど)は資産調査を行います。弁護士や会計士が大挙して、過去の財務諸表、取締役会の議事録、社外取引状況などを調べます。一方、ITに関しては評価 がなかなか難しく、残す価値があるのかそれとも廃棄すべきか、残す場合は新会社で利用する際にどのように、またどの程度の改修費用となるかなどを検討する 必要があります。我々は2週間でこの調査を請け、現行システムの評価と、今後の計画をレポートすることにしました。正直2週間でレポートを出すのは一苦労 であり、またファンド側のリクエストも具体的ではないので、直近のプロジェクトの評価、現行システム機能と今後求められるシステム機能を概観し、方向性を 出すことに注力しました。

当該企業では当時大規模な開発案件が実施されていました。数年前とはいえメインフレーム上での大規模システム構築は稀でした。営業力強化など業務改善効果 が出そうなステップまでがスコープに入っていましたが、開発途中で予算を使い切ってしまい、アプリケーションまで手がつかず基盤再構築を行う、即ちハード ウェアとOSを刷新するところで終りかかっていました。請け負ったベンダーとしてはやりやすい仕事のはずでした。システム稟議書を見ると、印を押す欄が 10箇所程あり、そこに印を押した方のどなたも当該システムがどのようなもので、どんな効果を目指しているか理解していませんでした。

ITは多くの企業にとって神経系であり、ITの活用が企業の存亡を分けるにも関わらず、この程度の扱い、ということに改めて驚きを感じた案件でした。メイ ンフレーマーの立場では、アプリケーションを開発するのは予算や期間超過のリスクが大きいので、基盤再構築の範囲で止めた方が安全です。しかし、そこで止 めたのでは、パフォーマンスが向上するとか機器の故障率が下がる程度で、ユーザ企業のビジネスメリットは極めて低い。ユーザ企業の立場で効果が得られる ITを考えることがITコンサルタントの役割だと考えています。

さて、本システム調査は一般社員には極秘のプロジェクトなので出入りも要注意でした。調査初日に会議室がわからず迷っていたら、どこからかご担当の方が やってきて、「お待ちしていました」と特定の会議室に案内されその後缶詰にされたり、ファンドの方には「私見でいいので、無駄使いだったシステム構築プロ ジェクトについて誰が一番悪いのか教えてください」と聞かれ、考えた末ある役員の方の名をお伝えしたら、「やっぱりね」と言われて、その役員の方はすぐに いなくなってしまったり。今思うと相当危険なことにふれていたのかもしれません。その後は、当該企業向けにシステムの全体像を検討するグランドデザイン や、管理会計システム構築などの協力をしてまいりました。

<プロフィール>

村井 龍一(むらい りゅういち)フューチャーアーキテクト株式会社 プロジェクト統括本部 プロジェクト推進グループ ディレクター

◆道楽

ランニング、エアロビクス、水泳、自転車など持久力系のスポーツを好んでやってます。学生時代よりも体力がついているような気がします。レースや大会には 去年から出るようになりました。そのためかウエストが7cmくらい減り、体のダウンサイジング効果が出ています。来年はフルマラソンで4時間を切りたいと 思っています。

◆略歴

1986年: 東京都立大学(現首都大学東京)理学部数学科卒
1986年: 三菱電機㈱入社
1994年: フューチャーシステムコンサルティング㈱(現フューチャーアーキテクト㈱)入社
現職
日曜日にランニングコースで。