21世紀型情報システムを考える-20世紀からの決別ー研究会 レポート 研究会 2011年度 研究会/講演会

【第18回『21世紀型情報システムを考える』研究会 第3フェーズ「情報の海をどう作るか」 】報告

国内MDM(マスターデータマネジメント)ビジネス最前線

<レポート / 池邊純一>

講 師: 山崎将良 氏 インフォテリア株式会社エンタープライズ事業部海外営業部
日 時: 2011 年6月7日(火)16:00~18:00 研究会 / 18:00~19:00 交流会
場 所: 株式会社アーク情報システムAKビル2階「大会議室」
ナビゲーター: 田口潤氏(インプレスビジネスメディア取締役)/ 山田博英(ソフタス顧問)
配布物:[1] レジュメ[2] 参加者リスト[3] 一般社団法人 日本データマネジメント・コンソーシアム 参加のご案内

 

1. 研究会ダイジェスト

今回は、情報の海の一つのコアであるマスタデータを、どうやって統合し、活用しうるように一元化するかに関する話しである。一概にマスタと いっても、顧客系、製品系、資材系等様々である。また、グローバル展開している企業では、グローバル、及び、夫々のローカルでマスタを持っているケースが 多い。そうした企業の中には、専門部署に専門人材を配置して管理している企業もあるが、それは少数派である。
インフォテリアは、MDMツールとしてパッケージングし販売している、日本企業としては唯一の会社である。MDMはどうだという話しではなく、今、日本の中でMDMはどんな状況になっているのか、実態を見ているインフォテリアの生の情報を中心に話して頂く。

  1. インフォテリアのMDMへの取り組みの経緯
    • 国産MDMツールとしてパッケージングし販売している唯一の企業である(マザーズにも上場)。1998年に ロータスをスピンアウトして起業した国産ソフトウェアベンダーだ。主力製品は、XML技術を活用したEAI(データ連携)ツール、ASTERIAシリーズ である。現時点(3月時点)では、国内2000社のクライアントを持ち、調査会社のレポートでも、この事業領域で何年も連続でNo.1である。ライセンス と保守で会社を回しており、殆ど請負をやっていない。国内の商社系、メーカ系パートナー21社が導入を行っている。今日、お話するマスタデータ管理に特化 した製品ASTERIA MDM Oneは、その延長線上にある。
    • 2007年にMDM製品をリリースし、関連セミナを企画した。すると400名の申し込みがあった。通常のセ ミナは8,9割が同業のIT企業やSIer、パッケージメーカの参加だが、この時はエンドユーザの参加が半分もあり、明らかに傾向が違っていた。2005 年くらいから開催されているMDM Summitに(毎年、北米・欧でキャラバンを行っている)2007年に勉強で参加し、2008年に出展した。日本では、2009年から日経BPが毎年 MDMのイベントを開催している。申込み500~600名、参加も300~400名であり注目度が上がっている。
  2. MDMとは何か
    • MDMはマスタ統合、整備を進めるための解決手段である。従来、属人的な作業の位置づけだったマスタ管理を 一元化することで、明確な業務として位置づけるためのものでもある。つまり現場のワーカーが個々に、アドホックに行っていたマスタ管理業務を、統一したマ スタを管理していく業務にし、専門の人間を配置するといったイメージだ。
    • メガベンダーが、SOAによってビジネスプロセスをつないでグローバル化に対応しようとしてきたが、いまひ とつ上手くいっていない。プロセスをつないだとしても夫々のシステムで管理しているマスタを綺麗にして流さないとだめだということである。IBMも地に足 の着いたSOAを提唱しており、データそのものに着目しないと上手くいかないと言っている。
    • マスタデータに関わる問題は、データやシステムだけの問題ではない。本来、企業活動に切実に関わってくる問 題である。例えば、2000年位に作ったシステムの機能不足でリプレースしたい、データが正規化されていない、コード体系がバラバラである、一つのカラム に複数の情報を入れている、読み出して利用できないといったことは、システム上の問題である。しかし、それが企業活動に関わる問題を生む。リアルタイムで 売り上げや在庫の状態を見たい、経営情報を可視化したいといったことに対応できないのである。MDMは、企業活動、経営や業務のニーズによって要求される べきである。
    • 10年前の集計レポートは3日後、一週間後でも良かった。しかし、今では、リアルタイムニーズが上がってき ており、バッチ処理して集計レポートを1日後、3日後に作成するというのでは遅い。せっかく、高額のBIシステムやDWHシステムを整備したが、思ってい た成果が出ていないケースが多い。また、製造業ではユーザから上がってくるクレームを、コールセンターから研究部門に速やかにフィードバックしたいという ニーズがある。これは研究部門とサポート部門で、部品データの管理レベルが違う、情報が回るような仕組みになっていないところから来ている。
  3. 海外MDMの市場
    • 海外では、すでにMDMの重要性が広く認識されており、製品の市場も大きい。2012年までに、ソフトだけで$1B~2B(1000~2000億円)、サービスが$6.2B(6200億円)と予測されている、主に、北米が市場として大きな動きを示している。
    • 海外の流れとしては、管理する対象のマスタが大きく移り変わってきていることがあげられる。2006年、 2007年頃は、保険や金融における顧客データの分析が主だった。リーマンショック以降、金融業のIT投資がスローダウンし、製造業、流通業を中心とした 製商品系のマスタへと主流が移り、データガバナンスによって統制を効かせて回していく、プロセスを意識したMDMの議論へと変わってきた。直近では、 MDMの議論は終わり、データガバナンスという次の議論、即ち、データガバナンスの中でマスタデータはどうあるべきかの議論になっている。そして、縦割り の単一部門の活動を対象とした業務処理中心のデータ管理ではなく、企業レベル、エンタープライズレベルでデータを統合して、複数部門できちっと有機的な企 業活動をしていこうという方向になっている。
    • MDMの実現形態もCentralized-MDM(マスターハブ型、コラボレート型)と言われるものに なってきている。マスターハブ型では、真ん中で統合マスタを管理し、マスタデータを管理するという業務やプロセスを設けて、そこから各システムにマスタ データを配信(レプリケーション)して運用する。
  4. 国内MDM市場
    • 日本でインフォテリアが2007年にMDMをはじめた当時、SAPジャパンが製品を出していた程度で、ユー ザの認知もなかった。しかしこの6月に、日経BPのイベントに出展した折りに、マスタ統合やデータ連携についてのアンケート調査を行った。2年前と比べ、 やっていかないとダメ、やろうと思っているという回答が伸びており、これは営業の肌感覚と一致している(去年の秋からMDMをやりたい、RFPにMDMが 入ってきている、興味が無かったベンダーからもユーザからMDM提案の要求があったという問い合わせがきている)。
    • 日本企業が直面する課題は、システム連携、運用ルール、マスタデータの統一や品質、モデリングと幅広い。 MDMへの期待効果としては、ITの俊敏性(柔軟性、アジリティ)を上げていくことや内部統制が中心だ。コスト削減への期待はあるものの、収益増加への期 待は高くない。この点は米国と違うところだと思う。MDMを検討中の企業は、年商1000億円~5000億円以上の企業であり、1000億以下は少ない。 規模がある程度大きな企業でないと、マスタの種類が限られるし、拠点を合わせて効率化しても、効果がでにくいから当然だろう。予算をとってやろうとしてい る1000億~5000億の企業の中での割合は見えないが(母集団は分からない)、海外売上比率が影響していると推察される。
    • 業種としては、製造業が熱心であり、小売業でも商品マスタのメンテナンスが大変なので解決したいというニーズがある。情報通信もマスタ統合にやってみようとしている(社内でプロジェクトを組もうとしている)。
    • ミック経済研究所のレポートでは、2010年にライセンスで30億円、今年37億円の市場規模となり、こういうご時勢だが2桁伸びると予想している。堅調に国内は伸びて行くだろう。
  5. データガバナンスとは
    • データガバナンスは、発展途上中の新しい用語で、海外でも、ベンダー各社毎にその定義は異なる。米国の DAMA(Data Management Association、DAMA-DMBOK GuideはDRIが邦訳)は、データガバナンスを9つのカテゴリに分類している。しかし、領域が広く、概念中心であり、どういう風にすれば良いか細かい 手順も明確ではなく、どこからやればよいかも示されていない。MDM Summitでも、欧米のデータガバナンスのちゃんとした事例はまだあまりないが、2007年に「MDMとは」と議論していた時と状況が似ており、2,3 年後に整理されてくるだろうと予想される。
    • 2007年にはMDMの中にデータガバナンスがあったが、議論が進んで、今では立場が逆転した。ウォッチしておかないといけない。
    • 日本では、データを管理していこうという組織化、文化は薄いが、海外では、ライブラリアン、データスティ ワードという言葉は一般的であり、データ管理の専門家がいる。海外の事例では、スティワードが業務部門データを管理し、その上でデータ調整委員会が部門間 の優先順やガバナンス管理をしている。その上で、第三者的機関であるデータガバナンス監視委員会が監視をきかす。日本ではデータ管理の担当役員をおいてい るところはあまり聞かないが、海外ではこの事例にあるようにデータガバナンスをきちんとする担当役員をつけて、その下で、内部できちんと管理し運営してい る。グローバル大手企業であるほど、マスタ管理を業務として捉えて運営している。
  6. 構築モデル
    • 一概に、「トップダウンで統合マスタを作っていく」「ボトムアップでできるところから」のどちらが良い、あるいは、「システム単位」なのか「マスタ単位」なのか等、どのようにすれば最適かと言える訳ではない。実装例として多いのはボトムアップのモデルである。
    • 誰がやるかが課題となる。きちっと組織を作って、仕組み作っていくというのは理想だが、現実的には組織を 作っても、業務部門も含め社内の抵抗も大きい。まずは、社内でどのシステムが正か決めて、それをハブにして既存システムに流していく、その流れの途中に、 統合マスタにデータをため込む機能として新しいサブシステムをつくるというのが一つの流れである。次に、正としていたシステムにリプレースが発生したとき に統合マスタを中心に据えて、最終的にマスタデータ管理を業務から切り離していく。
    • ビジネスを回していくにはプレーヤが必要であり、今の問題は、ベンダーとエンドユーザの間を取り持つコンサ ル、SIerの取り組みが本格的になっていないことである。その理由は、ノウハウ的なところで腰が引けている、社内で誰がノウハウを持っているか分からな い、ノウハウが属人化していて社内で活用できない、コンサルは上流工程を狙っていて開発には興味ない、といったことがあげられる。しかし、一部のベン ダー、コンサルでは前向きに取り組もうとしており、専門部門の立ち上げの話しも聞くようになってきている。本来、エンドユーザが積極的にやるのが良いが、 情報子会社、外注先、協力会社に丸投げしていたといったことで、リソースがない場合がある。
  7. インフォテリアのアプローチ
    • 日本のユーザは、MDMに何億円も投資する財力は持っていない。海外ベンダーの製品はライセンスだけで 5000万円もして、価格帯としてフィットしない。インフォテリアのアプローチだと、MH(Master Hub)で独立した仕組みが作れ、構築期間が短く結果もすぐ出る。海外動向や事例を研究したものなので、グローバルでも通用するだけでなく、日本のエッセ ンスを加えた日本式MDMとなっている。
    • 統合マスタを管理する、マスターハブでマスタデータだけを同期していく、トランザクション系データ連携基盤 を作るという3層で、社内の全ての情報を統制していくために、この夫々に製品を用意している。製品構成としては、MDM one MI、MDM one MH(ソフトウェアライセンス)、MDM one DQ(クレンジングや名寄せ)、MDM one GT(導入支援の役務)の4つで構成されている。

配布資料について、日本データコンソーシアムが、4月に、浜口氏を会長として立ち上がった。

2. 創発コミュニケーション(質疑内容)

本テーマに関する質疑応答では、[L-1]ビジネスレイヤ、[L-2]データレイヤ、[L-3]システムレイヤでの議論が交わされた。そ れを整理するなら、[L-1]ビジネスレイヤでは、 (a)戦略意思決定、(b)業務間連携、(c)業務遂行の視点から、マスタ統合の必要性について、[L-2]データレイヤでは、 (a)データ抽象化と具現化(明確化)、(b)データクオリティ、(c)データの散在とデータ統合、(d)コード体系の統一の問題、[L-3]システムレ イヤではマスタ統合の必要性を共通認識として、 (a)データ統合を将来像として描いたシステムの発展段階(Phasing)、(b)システムの開発、運用、変更、再構築とデータ品質維持、(c) 標準化の問題、が議論された。

  1. データ統合の必要性は経営戦略、業務遂行のニーズから考えるべきである
    • 経営戦略分析と評価のため、また、業務間連携(例えばコールセンターから研究部門への顧客からのクレームや要望の短期間でのフィードバック)、たらい回しの防止によりCS向上の視点から、データ統合の必要性は認識されている[L-1 (a)(b)]
    • アンチテーゼとして、名寄せ不要ではないか(属人的に必要な人にデータを束ねて見られるようにすれ ば良い、役員が、データが見えないと言って嘆いているのは、役員自身の情報収集力の低さではないか、BPOでも名寄せは議論されていないのではないか)と の議論もなされた。[L-1 (a)(b)(c)]
    • データ統合、及び、データ管理の仕組みが無いと、システムの機能追加をしようにも、どこにどのデータがあり、どんな意味付けがなされ、誰がどのタイミングで参照しているか分からない(恐くてさわれない)[L-2 (c)、L-3 (b)]
  2. データクレンジングとデータ散在の問題は、夫々に異なる次元の問題として解決する
    • 同じレギュレーションでデータをクレンジングすることで、データを明確化することができる。クレンジングだけの企業もある。[L-2 (a)(b)]
    • データクレンジングすらできていない企業では、まず、できるところからということで、クレンジングだけでも実施するべきと考えがちだが、ルールとそれに対する統制がしっかりしていなければ、すぐになし崩し的に汚れていってしまう。[L-2 (b)]
    • データクレンジングと名寄せは同一次元で考えられるが、異なる次元の問題として捉えて解決しなければならない。[L-2 (b)(c)]
    • データ散在が内包する問題は、業務の目的、業務処理の都合や効率性から、同一のものについても、散在するデータには夫々に意味付けされ、重複登録されている場合もあることである。[L-2 (c)]
    • データ散在の問題を解決するためには、前提として、データクオリティの問題を解決する必要がある。 手法としては、①ユニコードで管理し、夫々の属性は目的毎に責任部門が管理する、②どれかのシステムでのデータを正とし、個々のシステムの再構築の時点で 徐々に統一していく、の2通りの解決手法がある。[L-2 (c)、L-3 (c)]
    • しかし、第三者である、SIerやベンダーには、それらをサーベイしつくして、もれなく統一化することは難しい(手強い)。ユーザ企業自身が、人任せではなく、責任部門を設けてイニシアチブをとって統合していくことが必要である。[L-2 (b)(c)(d)]
    • JANコードのように自らでは決められない、また、商品になってはじめてコード設定されるコードも ある。企画、生産、商品段階を通して管理できるコード体系も必要である。また、トレーサビリティの視点から調達、生産、販売を追跡できるコード、有害物質 の含有量を追跡できるコードの仕組みも必要となってくる。[L-2 (d)]
  3. マスタ統合の段階的方法論
    • 10年前からやっているが、実現できていない。まずは、できることから実現していくことが現実的である。
    • そこで、正とするシステムからマスターハブを構築して各システムにリプリケートする。システム再構 築等のタイミングでデータ統合し、データ管理業務を独立させる。その上で、トランザクションも含めたデータ管理を実現していくという、段階的発展のシナリ オが現実てきである。[L-3 (a)

3. 21世紀型情報システムの諸側面(これまでの流れからのコメント)

MDMに対するニーズや費用対効果の議論から、複数の事業が混在するグローバル企業に顕著である。そうした企業では、2000年前後に喧 伝されたグローバル経営に向けて、ERP(One Fact in One place)やDWH導入を機に、データ統合の必要性は認識され、多くの試みもなされてきた筈である。しかし、年商1000億円超の大企業においても、今 なお、マスタ統合ですら遅れていると議論され、ようやく昨年辺りから少しずつ取り組みが見え始めてきたと言う。経済が停滞し企業収益が圧迫され、IT投資 そのものもシュリンクしデータ統合への大きな投資が望めない中で、データ統合を促進していくために、MDMツールや方法論の担う役割は何であろうか。

  1. 山崎氏のレクチャーでは、MDMの動機として、ITからの要請ではなく、経営戦略や業務遂行からのニーズが必要であるとの指摘があった。このことは「情報の海を作る目的」として、繰り返し議論されてきたことでもある。
  2. 欧米企業に比べ、日本企業はデータ統合による一元化が進んでいないとの認識に立ち、それを効果的に短期間に進めていくために方 法論とツールから話しを進めていくというのが一つの解決策となる。また、できるところから徐々に進めていくというのも、日本人的には受け入れやすい。
  3. 一方、インプリメンテーションの議論だけになるとAs-Isでの解決に陥りやすい。過去の研究会での、情報の海の必要性に関する議論、フレームモデルの議論を踏まえた、「情報の海をどうつくるか」として、今回のMDMの議論が位置付けられる。

4. 編集後記(及び、話題提供)(新事実発見と関連知識の提供)

  1. 東日本大震災以降、被災地の復興を急がなければならないにもかかわらず、国政の場では、政治家は政治権力をめぐる政争に明け暮れてい る。福島原発事故では、想定外という言葉が飛び交ったが、当初、福島原発を設計したエンジニアは、様々なリスクを洗い出し想定していたという。しかし、経 済性の理由(コストを抑える)から、想定していたことを想定外にすることによって原発は作られた。今回の原発事故によって社会全体として支払わなければな らないコストは計り知れない。
  2. データ統合によって情報を一元化するという議論は歴史的にも古い。しかし、長年、喫緊の課題として語られてきたにもかかわらず、組織内 にある様々なコンフリクト、コスト抑制という大儀が優先されて、情報の一元化は一向に進んでいない。この閉塞した構図は、大震災以降の政治の停滞、福島原 発の厄(人災)を招いた構図と酷似している。大震災と原発事故を体験した日本人は、今一度、社会システムの視点から、その深層にある、社会や組織、人とし て、本来何をすべきなのか、その有り様について問い直さなければならないのではないか。(ⅰ) 社会フレーム、企業のフレーム、個人のフレーム(ABCフレームモデル)から、こうした問題として整理することが、改めて必要になってきたのである。
  3. 新たな経営戦略を構想するために情報を活用し、そのために役立つ情報システムをどの様に構築していくべきかの根本議論としては、ビジネ スとしてのシナリオや具体化させていくロジックにも言及して深め、議論を整理していかなければならない。そのためには、将来のコアコンピタンスをどう形成 していくか、また、フレーミング(問題を捉える枠組み)をどう設定するかといったことを描き、ビジネス粒度(例えば、個客か標的市場か、単品かプラット フォームか、グッズドミナントかサービスドミナントか、単一市場戦略か多面市場戦略か、クローズドイノベーションモデルかオープンイノベーションパラダイ ムか等)を定義し、再体系化することも必要となる。これは、企業の長期的経営戦略にも関わる最も重要な論点である。これらを「情報の海」の中に作り込んで いくためには、データとしてどの様に正しく表現するべきか、(ⅱ)データそのものを抽象化し、あるいは、オントロジカル的な視点で設計することも必要とな ろう。
  4. その上で、こうして設計されたデータを処理し情報として活用できるようにするための仕組み、即ち、(ⅲ) [L-1] [L-2] [L-3]の各レイヤに則した視点でシステムを如何に構築し、インプリメンテーションや運用を進める仕組みが必要なのであり、それが今回の議論の位置付け である。
  5. 上記(ⅰ) (ⅱ) (ⅲ)の順序をきちんと実施していくためには、過去の研究会で指摘されてきたように、アーキテクトの存在が必要である。そして、そのアーキテクチャに沿っ てシステムやデータを構築し、品質を維持し、必要に応じて改訂していくためにガバナンスが必要となる。

以上