EPUBマニュアル研究会 レポート 研究会 2014年度 研究会/講演会

【レポート】 EPUBマニュアル研究会

レポーター:木村修三 EPUBマニュアル研究会座長 

1.EPUBとは

EPUBとはElectronic Phblicationの略称です。電子書籍を作る際のコンピュータ上の形式の一つです。現在では電子書籍を作る標準形式となっています。

PDFも同じコンピュータ上の形式の一つです。これは、主に電子文書を保存したり印刷するための形式として利用されています。ビジネスの世界では標準的な形式として広く利用されています。また、DOC形式(Word文書)やXSL形式(エクセル文書)もビジネスの世界では数多く利用されています。

既に多くの形式がコンピュータ上の形式として利用されている中で、なぜEPUBという新しい形式が必要になっているのでしょうか。

これは、新しくタブレットやスマートフォンといった身近で使いやすい機器が普及してきたからと考えています。電子書籍にも幾つかの形式が存在していましたが、いずれも世界標準にはならず普及しませんでした。EPUBは世界標準として普及してきています。これはその中核技術としてHTMLを使用したことが大きいと思います。HTMLはインターネットの世界では標準言語です。

更に最近ではこのEPUBの技術を電子教科書の世界へも普及させようとする動きが活発です。つまり、これからの文書はEPUBが標準になっていくと思われます。

2. EPUBの特長

業務マニュアルをEPUB化することで得られる特長は次の5点である。

●リフローと自動目次ページ
●文字の拡大・縮小
●画像や表の拡大表示
●しおりの挿入と自動目次
●メモの挿入と自動目次

(1) リフローと自動目次ページ
従来のWord文書やPDFは印刷するとこを前提とした文書となっている。つまり、ページは変化しまいもので印刷してきれいになるように編集されている。これをタブレットやスマートフォンなどの画面サイズの異なる機器で読む場合はページの固定が読みにくくしている。これを改善したものがリフロー型である。データファイルが同じでも画面に表示する時に画面サイズに合わせて行の折り返しを行い、そこで生じた目次のページ数を再計算して表示する。これによりどのような画面サイズでも読みやすい文書が表示される。

1 -> 2
リフローで画面が1ページに編集されている

 

3 ->4
リフローに合わせてページ数を調整
 
 
(2) 文字の拡大・縮小
タブレットやスマートフォンは機器ごとに文字の拡大・縮小が自由にできる構造になっている。これにより自分の視力に適した文字のサイズで読むことができる。1画面の文字数は当然変化するのでこれに合わせて自動的に目次のページが再計算されて表示される。

5 -> 6
文字の拡大縮小による画面の状況

 

(3) 画像や表の拡大表示
画像は機器の画面の大きさに合わせて表示されるため細部が見づらくなる。リーダーの機能として図をダブルタップすることで画面全体に拡大表示できる。更にピンチすることで一部を更に拡大してみることができる。こうして画面が小さな機器においても細部まで確認することができる。
表についても同様である。リーダーの機能として表をダブるタップすると2ページ以上にわたって表示されていた表が1画面にまとめて表示される。これをピンチすることで更に細部を拡大して見ることができる。
 

7 -> 8
左の図をダブルタップすると右のように1画面全体に表示

9
更に一部をピンチすると詳細を画面全体に表示される

10 -> 12
左の2ページにわたる表もダブルタップで右の一覧表で表示

12
更に一部をピンチすると詳細が画面全体に表示される
 
 
(4) しおりの挿入と自動目次
1つの業務マニュアルの中で個人が担当する箇所は限られている。その場所を直接見に行くための機能がしおりと自動目次である。リーダーの機能として画面で表示されて状態でしおりマークをタップすることでしおりが挿入されしおりの目次が作成される。これを複数繰り返すことで自分に必要な目次を作成できる。

13 -> 14
しおりの挿入と自動目次
 
 
(5) メモの挿入と自動目次
業務マニュアルの中に自分用のメモを入れることで、マニュルを自分用マニュルとして活用できる。EPUBではリーダーの機能として自分用の情報を追加編集が可能である。メモの他にハイライト、赤線のアンダーラインなどができる。こうして作成したメモなどはメモ用の目次が別途作成されページ付けされる。こうして作られたメモなどは次のマニュアル改訂時に参考となる。

15 -> 16
メモの挿入と自動目次

 

3. 業務マニュアルのEPUB化

この研究会は、ビジネスの世界で、グループで業務を行う際に使用する「業務マニュアル」をEPUB化する研究を行っています。業務マニュアルは業務の遂行に最も適した基準や役割分担、作業手順などを記した文書として重要なものであると認識しています。研究会では、これを必要とする業務関係者が常に見ることができる環境を提供するにはEPUBが最も適していると考えます。新規業務担当者(新規採用や人事異動)の教育用、業務継続者のリファレンス用として最も見やすく使いやすい形式と考えています。

 

4. 研究会の経緯

EPUBの仕様は1999年に最初の仕様が発表されています。日本で普及しはじめたのは、2011年10月に第3版が発表され、日本語化に対応してからです。この仕様を業務マニュアルに適用すれば業務マニュアルが使いやすくなり業務改善に役立つと考え2012年11月にBPIAとして研究会を立ち上げました。

そして、昨年の第1期では業務マニュアルがどのような形式で記述されているか、これをEPUB化するにはどのような変換方式がとれるか、また、このマニュアルを配布・更新・管理するにはどのようなシステムが必要となるかを研究してきました。

現在の調査結果では、業務マニュアルはWordで書かれているものが多いが構造化がされていない。
これをEPUB化するには、アンテナハウス社のCAS-UBと言うWebサービスを利用する。また、マニュアルの配布・更新・管理はソフトウェア・パートナー社のCUBEシステムを利用することで研究を進めてきました。その結果については、電子書籍としてアマゾンより出版されています。17

書籍名「マニュアルEPUB化ハンドブック-2014年版」価格 1000円
http://www.cas-ub.com/project/public/public-01.html
 
 
5. 第2期のEPUBマニュアル研究会

2013年12月17日に準備会を発足し、第2期が始まりました。ここでの目標は現場でのEPUBマニュアルの活用実績を積むことです。まずはそのための第一歩として研究会メンバーによるEPUBマニュアルの作成と活用の実験です。この実験の中で生じる様々な経験をノウハウとして蓄積しようと考えています。現在、実験に参加しているメンバーは15名ですが、まだ新規参加をお待ちしています。

5.1. 第2期の目標
・実際の業務マニュアルを研究会でEPUB化
・現場での効果を検証
・EPUBの技術動向、WordToEPUB化の研究
・コンテンツ管理の方法について研究
・その結果を報告書として11月に発行

5.2. 第1ステップ
・研究会メンバーのEPUBマニュアル作成と使用の実験
 作成するマニュアルの登録
 使用するWordのバージョンの登録
 端末とそのOS登録
 スタイル編集付きWord文書作成
 CAS-UBの学習
 Word to EPUBの学習と実験
 コンテンツ管理の学習と実験
 結果のレビュー

5.3. 第2ステップ
・実業務マニュアルをEPUB化
・関係者(作成者、管理者、利用者など)による検証
・メリットの体験、問題点抽出、改善策検討
・今後の展望

5.4. 第3ステップ
・今年度のまとめと提言
 マニュアル原本の修正方法
 EPUB化手順
 コンテンツ管理方法
 試行方法例
 導入手順例
 イーラーニング

6. 第8回(第2期第1回)開催概要
 2014年1月21日(火) ソフトウェア・パートナー会議室
 議題
 ・26年度計画の概要説明(木村)
 ・EPUBの技術動向とCAS-UBの紹介(小林)
 ・マニュアルEPUB化実験参加者の紹介と募集(木村)
 ・EPUBマニュアル管理システムの紹介(天井)
 ・EPUB用Word編集手順書の紹介(木村)

業務マニュアルをEPUB化してより有効活用できるようにするために必要な環境の説明と実際に自社の業務マニュアルをEPUB化する実験参加者の確認を行った。Wordで作成した業務マニュルを構造化しCAS-UBでEPUB化を行い、EPUBマニュアル管理システムで登録・配布・改訂管理を行う。

7. 第9回(第2期第2回)開催概要
 2014年2月18日(火)㈱ソフトウェア・パートナー 会議室
 議題
 ・CAS-UBの使用方法説明とID登録希望者確認(小林)
 ・マニュアルEPUB化実験状況と問題点レビュー(全員)
 ・CUBEの進捗(松崎)

今回はEPUB化のキーとなるアンテナハウス社のWebサービスCAS-UBの使用方法の具体的な説明をデモを交えつつ行った。その後、参加者が登録IDを行うための方法について説明があった。

8. 第10回(第2期第3回)開催概要
 2014年3月18日(火)㈱ソフトウェア・パートナー 会議室
 議題
 ・EPUBマニュアル管理システムの利用方法説明(天井、松崎)
 ・わかりやすく、簡潔に書く!「業務マニュアルのライティング技術」(高橋)
 ・マニュアルEPUB化実験状況と問題点レビュー(全員)

今回はEPUBマニュアルの運用管理を行うシステムCUBEの機能・利用方法の説明とIDの登録方法について、株式会社ソフトウェア・パートナー様から詳しい説明があった。次に業務マニュルを作成する上で必要となる、「わかりやすく、簡潔に書く!業務マニュアルのライティング技術」の説明を株式会社ハーティネス様より行われた。また、マニュルEPUB化の実験状況の報告が行われた。来月は希望者向けにWordの原文書からEPUBマニュアルの作成と運用管理を実習する予定でいる。

まだ、まだ新規の参加者を募集しているので関心のある方は是非おいで下さい。

◎次回の開催予定
2014年4月15日(火)15時より
株式会社ソフトウェア・パートナー 会議室にて開催
詳細申込みはこちら

◎EPUBマニュアル研究会について

https://b-p-i-a.com/wordpress/?p=2096

◎関連リンク
アンテナハウス社 クラウド型汎用電子書籍編集・制作サービス:CAS-UB
http://www.antenna.co.jp/epub/

ソフトウエア・パートナー社 SPスマートコンテンツCUBE(紹介動画)
https://www.youtube.com/watch?v=dNByp3CFp-o

<きむら・しゅうぞう>日本ユニシス株式会社で汎用コンピュータのテクニカルサポート、パソコン開発部長、オープンシステムのシステム部長などを担当後、株式会社エフ・アイ・ティで取締役として帳票ソフトSVFの開発に従事、その後、ウイングアーク・テクノロジーズ株式会社(現ウイングアーク株式会社)で技術部門の責任者として帳票ソフトSVFや多次元高速集計ソフトDr.Sumの営業支援・技術サポート・教育などを担当。現在はパソコンやWebのコンサルタントをしている。

以上

epub2-2 
研究会の様子(ソフトウェア・パートナー社にて)