【第51回 目からウロコの「新ビジネスモデル研究会」】報告

テーマ:なぜ今‘地域’が注目されるのか ~都市のチカラ、地域のチカラ~
講師: 齋藤 雅子  隠れ茶を守る会 グリーン・コネクションズ代表 都市農村交流コーディネーター
2012年3月27日(火)16:00~ / 市ヶ谷 アーク情報システム

■はじめに

齋藤雅子と申します。

静岡市梅ヶ島の地域おこしに関わっております。本日のお話は,活動のご紹介が中心になります。

活動を始めることになったきっかけは,静岡県の安倍川源流の梅ヶ島・東峰から見える尾根に点在する茶畑の景色を見たことでした。安倍川の氾濫で川のそばは地すべりで埋まってしまうので,川の近くに集落を作るのは危険です。それで山の尾根の森を切り開いて,集落を作り,茶畑を作っています。ですから,山の高いところの尾根づたいに,ぽつんぽつんと集落があって,そこでお茶が作られています。

梅ヶ島は安倍川源流に位置し,安倍川が生まれる場所にあります。安倍川や支流がある標高の高い場所に茶畑はあるため,毎朝,霧に包まれて真っ白になります。

この地区には,日影沢金山(ひかげざわきんざん)もあって,徳川軍がこの金を欲して攻め込んだといういわれもあります。駿河小判はここで産出した金から作られ、そういうことで金座という地名が静岡市街地に残っています。銀座という地名はここにはありません。

 

■どうして梅ヶ島なのか

私は,静岡の国吉田出身で,梅ヶ島の生まれではありません。ただ,梅ヶ島の水がお茶によいというので,小さいときから,父がお茶用の水を汲みに梅ヶ島に行っていました。それがひとつのきっかけになって1997年に終の棲家を梅ヶ島に設けました。その後、

梅ヶ島の様子を知るようになりました。集落の前にある茶畑が放棄されて,荒れ放題の状態になるのは、お茶だけでは食べていけないからだというのです。

2000年に10年計画を立てて,地域起こしを考えました。東京農業大学の学生となり、卒業後は「NPOえがおつなげて」にて自分にないスキルを蓄えていきました。2009年にデザイナーの方と出会ったのをきっかけに,10年目より一年早く「隠れ茶を守る会」を立ち上げることになりました。

現在は,緑茶に加えて,和紅茶を開発・販売するようになりました。さらに啓蒙のための「お茶くらぶ」も始めています。

 

おいしいお茶になるための3つの条件というものがあります。

まず,寒暖の差が大きいこと。

次が,霧がかかること。

そして,日が当たり過ぎないことです。

 

最後の条件は,日が当たるとカテキンが生成されて苦くなるためです。日照時間が長いと,おいしいお茶を作るのに適さないということです。

 

梅ヶ島は,おいしいお茶を作る条件をすべて満たしています。さらに酸性土壌で水はけの良い土地で,本当に条件がそろっています。冷涼な気候のため,農薬なしでも一番茶が取れますし,二番茶など刈り取ったものを落としておけば有機肥料になります。

これだけのおいしいお茶のための条件がある梅ヶ島ですから,このまま茶畑が放置されるのは残念なことです。美しい茶畑の景観を次世代に引き継げるようにと思いました。

 

■茶農家の経済的自立

 

問題は,茶農家が存続して,茶畑の手入れを続けていけるようにならないといけません。茶畑の景観を残すためには,茶農家の経済的自立がどうしても必要です。

 

まず,お茶の取引価格が安すぎるという問題があります。

梅ヶ島のお茶というのは,5月末から6月初旬にできます。これは取引上,大変不利になるのです。新茶の1番茶なのに,2番茶価格で取引されてしまうのです。

せっかくのおいしいお茶なのですが,安い価格での取引になりますので,お茶では食べていけないということになります。お茶農家をやめて,他業種のところで働く人が多くなります。そのために茶農家が40%以上減りました。茶畑は2割以上放棄されています。

 

元のお茶畑に戻すため,ボランティアとともに活動しています。茶の木というのは,手入れをせずにいると,すぐに3~4メートルに伸びてしまいます。毎年手を入れているからお茶畑の形になっているのです。

本当は茶業を続けたいけれども,食べていけないというので離農する人がほとんどです。2番茶価格というのを見直さないといけないと思いました。梅ヶ島のおいしいお茶に見合った価格で消費者に直接お届けすることを考えました。そこで「隠れ茶」ブランドを確立しました。お茶の場合,新茶もおいしいのですが,保存しておくと熟成してきますので,その熟成茶もおいしいのです。徳川家康は熟成茶を好まれたといいます。

 

今後のことを考えると,緑茶だけでは本当に継続した事業にならない,後継者確保もできないということで,和紅茶ブランドの開発に着手しました。

幸い地域に,紅茶を24年間作り続けてきた紅茶名人がいました。その方の紅茶をいただいたとき,香りのよいのに驚きました。タンニンやカフェインが少なくほんのり甘みのある和紅茶です。アッサム種のお茶は,タンニンが多く,カフェインも多いのですが,やぶきたは,中国種で,タンニン、カフェインが少ない緑茶によく使われるものですが、その葉を紅茶にしています。「山霧の香り」とネーミングし販売を始めました。国産紅茶専門店「紅葉」の岡本店長からもの日本で10本の指に入る香りだと高い評価をいただいております。

山霧の香りでは,水出しで高い香りのIceTeaが楽しめます。

 

■地域おこしの活動

 

お茶の開発・販売以外の活動としてのグリーンツーリズムについても,ご紹介させていただきたいと思います。

安倍川を散策していただき,茶摘をしていただくツアーを企画しています。お茶に関心があるのは女性だけではなくて,男性もご関心をお持ちの方がいらっしゃって,参加くださっています。お茶は奥が深いものだと思います。

茶摘をした後,ホットプレートで30分手もみ風を味わってもらっています。それから安倍川源流の森を散策していただいています。オオイタヤメイゲツという楓(かえで)の群生地があって,楓は秋だけでなくて新緑の季節もきれいです。その森で安倍川が生まれ、流れに沿って成長していくのを見てもらいます。

少しハードな沢のぼりコースもあります。天然水流を利用したかつてのわさび田を見ながら,ブナの原生林を歩きます。

 

企業の茶畑プロジェクトも昨年始まりました。近年企業の姿勢が変わってきたように思います。社会の真の幸せとは,会社の価値とは何かを問うようになってきているところが増えてきました。仕事だけでなくて自分の生きがいになることや,地域貢献をめざすというのが企業でも個人でも増えてきていると思います。行政側でも,規制を緩めたり,NPOに特例を設けるケースも出ています。

企業が梅ヶ島の茶畑を利用して,社員達に自然の中で作業を楽しんでもらいたいというところもあります。同じ作業を協力して一緒にやっていると,年齢も地位も関係なく,コミュニケーションが取れるようになってきます。地域の方々との交流も図れます。こうした活動は,地域活性化の直接的な利益だけでなく,間接的な利益にもなっています。地元の食堂や蕎麦屋さんが、地域のものを使って,工夫をして,おいしいお弁当を作れるようになってきました。視察のお話があると,私の店で作りたいと手が上がるようになっています。外注するのではなくて,地域でお弁当が作れる体制とスキルが整ってきました。

 

それから,耕作放棄地の再生のため,企業の社員の皆さまが開墾をしてくださっています。ノコギリで木を切り倒し,根を掘り起こし、ツタを取り除いて,茶畑の姿に戻しています。来春には茶葉がとれるようになります。地元新聞社からの取材も来て話題になっています。

梅ヶ島に東京の若い方々が来てくれるだけでも,地域の人たちはたいへん喜んでいます。ここが気に入って若者が住んでくれるといいなあと,ひそかに願っています。そういう思いを持ちながら,お茶文化の小さな伝承を行っています。

 

■おわりに

 

今後のことを考えると,都市のニーズと地域のニーズをマッチングしていくことが大切だと思っています。タイガーマスク現象に象徴される「社会貢献」の場を求める人が増えています。都市にとっては,安心できる農産物が必要ですし,地域には確かな安全な食べ物,飲み物があります。若者が真の幸せ探しをするときに,都会だけでなく,田舎にもそれがたくさんあるのではないかと思います。地域では経済力不足,マーケティングスキル不足ではありますが,素材はあります。実際に見ていただけば,たくさんのビジネスの芽、社会貢献の場があるのではないかと思います。

 

 

農業は気候の影響で収穫量が変動します。もし一定金額の年契約をしてくださる会社が一定数あれば,農家には一定の年収になって,安定した基盤ができます。そうすれば農家は安心して農業が続けられます。このような「提携」や「CSA: Community Supported Agriculture」を導入し、農家の存続を担保したいと思います。「提携」「企業の茶畑」にご興味ある企業を募集しています。

 

 

 

梅ヶ島は全世帯が湧き水を使っています。おいしい水もあります。お茶だけでなくて,梅もありますし,わさびもあります。歴史ある梅ヶ島温泉もあります。ぜひ梅ヶ島にお越しになってみてください。

 

個々人ができる茶農家支援、「お茶を飲んで茶農家を応援しよう!」もお願いしたく思います。

 

本日はありがとうございました。

<記録 丸山有彦>

 

◎隠れ茶を守る会 グリーン・コネクションズ

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