レポート 企業活性化研究会 企業活性化研究会(2019年) 研究会 2019年度 研究会/経営サロン

企業活性化研究会 企業訪問レポート 石川県金沢地区

 企業活性化研究会では、「特徴ある経営で成功している企業の成功要因を中心に分析し、日本企業を活性化するための企業のあり方や施策、働き方等について検討する」という趣旨で活動しています。
最近の研究テーマとしては、“働き方改革による企業と地方の活性化”、“イノベーションと地方創生”、“Society 5.0(未来投資戦略、第4次産業革命、AI化等)における社会動向変化の働き方への影響”があります。毎月の定例研究会のほか、年数回、企業訪問を実施して検討の参考にしています。
 今回は、石川県金沢地区の企業を訪問いたしましたので、その概要をレポートいたします。

 

石川県金沢地区の特徴

 東洋経済が今年6月に発表した“住みよさランキング2019”では、石川県の街が全国上位20市のうち、7市がランクインしています。金沢市に隣接する白山市が総合1位、野々市市が3位となっており、金沢市が20位です。100位まででは、石川県は11市中7市、富山県は10市中8市、福井県は9市中7市と北陸3県が圧倒しています。
 こうした金沢近郊の地域では、地域や伝統に根づいた企業が多いことに加え、企業誘致も盛んで、豊富な地下水(工業用水)、安定した地盤、きまじめな気質などが有利なポイントであるとされています。企業からの税収も増え、子どもの医療費助成などが実現しています。
 金沢近郊では、特徴ある中堅のオーナー企業が多く、そうした企業では、経営者間の横のつながりがあり、お互いの切磋琢磨にもつながっていると思われます。一方、既存ビジネスへの危機感から、新規事業への挑戦意欲が高いことも特徴といえます。金沢だからできたこと、オーナー企業だからできたこと、金沢だから守れたことなども多数あるように感じます。

 金沢地区で特徴ある経営をしておられる有力企業のうち、今回は、株式会社山岸製作所、北菱電興株式会社、若松梱包運輸倉庫株式会社、ホクショー株式会社、株式会社箔一を訪問させていただきました。


 

 
 株式会社山岸製作所は、昭和11年(1936年)木工所としてスタート、木製家具の製作を主体として事業展開をされていましたが、バブル崩壊を機に、オフィス・インテリア家具の代理店を主な業務とし、働き方改革の提案など“モノ売りからコト売り”へと事業転換し、その後、6年連続経常黒字を実現されました。現在、「暮らし方」の提案をするインテリアショールーム「L’INTERNO」と「働き方」の提案をするオフィスショールーム「L’SCENA」を展開されています。

 自社では働き方改革に取り組み、フリーアドレスやABW(Activity Based Working)の採用でコミュニケーションを強化し、見える化と効率化に注力されました。こうした成果をもとに、中小~中堅企業の経営者を対象に、“体験談を顧客に伝える”、“来てもらう(会社を見てもらう、話を聞いてもらう)”という活動を展開し、“変わることを恐れない柔軟な経営姿勢”を伝えておられます。見学実績は450社となっています。企業以外でも、学校の職員室をフリーアドレス化するなどの挑戦をされています。地方創生に関しては、「石川県を働き方の最先端県へ」を目指し、地方で働くことの魅力を伝えることに注力されています。


 

 
 北菱電興株式会社は、昭和22年(1947年)に三菱電機、三菱重工業の代理店からスタートし、「創意工夫」を社是として、自社製品の開発に力を注いでおられます。事業内容としては、FAシステム、空調冷熱住設・ビルシステム、情報通信・映像システム/半導体・デバイス、社会/環境システム(水処理プラントシステム、太陽光・小水力発電システムなど)、施設事業(空調・給排水衛生設備、電気・通信設備工事など)、開発事業(IoTソリューションなど)があり、石川県を代表する三菱電機の代理店として事業を推進してこられました。

 今後のビジネス展開として、年功などの人事制度の改革に加え、新規ビジネスには専門部門を立ち上げて、力を注いでおられます。農業への投資を重視し、金沢工業大学などとの産学連携で、“ICT・IoTを活用した「いちご」栽培に関する実証研究”として、空調制御等によりハウス内の環境を一定に保ち、品質のばらつきを抑えた均質な美味しいいちごを栽培する実証実験をされています。
 新規事業に関しては、「失敗と経験」を重視し、次の事業につなげることで、モチベーションの高揚につなげ、変化を許容する風土の醸成に努めておられます。
 働き方の面では、“仕事と子育てを両立させ、社員全員が働きやすい環境をつくることで、社員全員が能力を十分に発揮できるようにする”という行動計画のもと、いくつかの施策を展開されています。


 

 
 若松梱包運輸倉庫株式会社は、創業が昭和2年(1927年)、設立は昭和34年(1959年)、トラック台数269台、グループ従業員489名、低温物流に高いノウハウをもつ、北陸地域でトップクラスの物流会社です。強みとしては、カテゴリー別の共同配送(多彩な商品を最適な温度帯で配送)、エリア最大級の配送先カバレッジ(北陸三県の量販店・卸をカバー、中京圏などにも配送ネットワークを整備)、安全と品質重視の物流(すべてのトラックにGPS、車両総合管理ツールを導入)などがあります。

 一方、トラック業界は、売上15兆6千億円、従業員185万人、企業数7万社の大きな業界ですが、29歳以下の若手が10%以下であること、ネット小売業界の発展で配送や倉庫の仕組みに変化が起こっていることが課題となっています。
 若松梱包グループは、さらなる成長を目指して、3月に、大和ハウス工業の連結子会社化を決断されました。グループの持つ低温物流ノウハウを効果的に活用することで、大和ハウスグループの物流事業領域を拡大させるとともに、大和ハウスグループの持つ物流施設開発能力や先進の物流テクノロジーを活用することで事業拡大を目指されます。また、アジアへの冷凍食品普及にも挑戦されています。


 

 
 ホクショー株式会社は、設立が昭和27年(1952年)、“最適なモノの流れを創造する”をコーポレートスローガン、『製造から小売までのサプライチェーンの自動化・効率化に貢献する』を企業使命として、垂直搬送システム、バラ物自動仕分けシステム、仕分け搬送システム、コンベヤシステムなどの物流自動化システム・機器メーカーとして、顧客に最適なシステムの提供を目指されています。スタンダード製品では多彩なアレンジ力で、システムエンジニアリング製品ではカスタムメイドで現場最適を実現、電源設備容量を低減し消費電力を削減したシステムに特徴を出され、BCPにも対応されています。垂直搬送システムのシェアは40~50%、バラ物自動仕分けシステムのシェアは60~70%とトップシェアを誇ります。ビッグサイトの展示会などにも積極的に出展し、技術力の顧客への浸透やブランド力向上に努めておられます。

 今回は、主力の白山工場を見学させていただきました。工場内の「PAS展示室」では、PAS(バラ物自動仕分けシステム)を実際に動作させていただき、技術力の一端を体感できました。働き方への取組みでは、定例会議の改善などで生産性を向上し、残業削減を目指され、社員がより活き活きと働ける環境づくりに注力されています。


 

 
箔一株式会社は、創業が昭和50年(1975)、設立は昭和52年(1977年)、企業理念は、“輝きの文化を明日の歓びに「生活創造カンパニー 箔一」”(金沢箔の継承と革新を通じて箔生活文化情報を世界に発信し、地域社会と顧客の夢の創造に貢献します)、また、経営信条としては、「公平で働きがいのある職場を築き、社員とその家族の豊かな生活の実現を目指します」とされています。
 事業分野は、工芸品、化粧品、食用金箔菓子、建築装飾、観光など多彩ですが、“金箔総合企業”として、常に最高の品質を求められ、食用では、北陸地区で最初にHACCPに対応したISO22000(食品衛生管理に関する国際基準)を取得されました。ブランド力向上にも留意され、金箔装飾を施したLVグループ『ゲラン』のフレグランス『ミツコ』の100周年記念スペシャルボトルが11月に発売されます。一品ものの受注工芸品もあり、職人の技を発揮できる場面も多くあります。

 経営の観点では“伝統と革新”がキーワードとなります。伝統を守りながら、特徴ある製品で他社と差別化を図り、製品の多様化などで安定した経営をめざすことも必要です。職人技術の伝承と素材(原材料)の管理も重要となります。“職人が居続けることのできる企業”、“女性が来たくなる企業”を目指されており、女性の比率は8割となっています。


 

 
金沢近郊には老舗といわれる名店が多いのも特徴です。金城楼は創業百二十余年の老舗懐石料亭旅館で、庭と建物は前田家ゆかりのものです。地元の食材を大切にしながら、伝統的な加賀料理を守りつつ、新たな金沢の食文化の発信にも努めておられます。ヤマト醬油味噌は創業1911年、発酵食文化の担い手として、発酵食品の良さを伝えることに注力しておられ、発酵食美人食堂では糀を使ったメニューを味わうことができます。

 

最後に

今回の訪問に際し、お忙しいなかご対応いただいた、株式会社山岸製作所、北菱電興株式会社、若松梱包運輸倉庫株式会社、ホクショー株式会社、株式会社箔一の関係者の皆さまに深く御礼申し上げます。
また、株式会社三技協の仙石社長には、各社との調整や現地での移動等にご尽力いただきました。
関係の皆さまにあらためて御礼申し上げます。

(企業活性化研究会 岡田 正志)