会員コラム

日本の教育についての雑感

 森 俊明
2013/1/28

 

私は最近ある児童養護施設の学習ボランティアを始めました。もともと、数年前にリタイヤした頃から子供たちの勉強のお手伝いができればと考えていました。ようやく知人を介して、その施設の中学2年生の生徒に数学と理科を教えることになりました。

最初に驚いたのは、教科書が大きくなり、昔の教科書とは比べ物にならないほど大きな字とイラストが描かれていて、特に理科などは図鑑のように美しい本になっていました。しかし、周期律表などを学ぶのですが、単なる順序で覚えるようで、電子の配列などを説明している個所はありません。偉大な先人の業績ですから、もう少し踏み込んだ説明が有っても良いと思いました。数学も代数や幾何の単元が混在している印象があります。生徒は混乱しないでしょうか。私は中学生のころ、幾何は大好きでした、何故ならギリシャの賢人達が長い時間考えて、ある場所に補助線を引くと、まるで魔法のように解が浮かんでくるのですから。その美しさや感動を伝えたいですよね。それを簡単に定理として教えるのはもったいない気がします。

例えば、三角錐の体積も円柱の1/3であることは書いてありますが、何故という理由が無く、暗記として式を覚えるようになっていました。勿論、積分などを説明しないと理解できないとは思いますが、ならば積分と微分を中学生からゆっくり教えるのも良いとおもいます。積分、微分というと何だか難しいと大人は考えますが、別に中学生だから難しいということはありません。ものの本質から迫っていくことが必要と思います。ことほど左様に基本的な事を、きちんと時間を掛けて教えていないから、数学や物理が暗記ものになり、将来に新しい理論を作り、発見をしてゆくという知的な好奇心が失われつつあるのではなかろうかと心配しています。

さて、次は海外のインターネットを使った教育システムのお話です。
この、エッセーを読まれる方々はとうに「Khan Academy」のことはご存じだと思いますが、この方は最初に遠くに住む甥御さんに数学を教えることになり、ネットを使った授業を始めたのですが、次第に拡大して、今では英語圏の生徒がネットを見ながら勉強をしています。また、教材も数学以外に理科や社会、コンピューターサイエンスやSAT(大学入学検定)用の問題や解説まで含まれています。さすがに、MITの秀才だけに、数学などは体系化した構成で、授業が作られています。私も時々、その授業を見ますが、英語の慣用句が聞き取れず、なかなか英語圏以外で勉強するのは大変ですが、別に考えれば、英語と数学や他の教科も同時に学べるのですから一挙両得かもしれません。

この間、教えている生徒に、この授業を見せたら、目を輝かせていました。学校が荒れているとかレベルが落ちているという声を耳にしますが、どうでしょうか、大人の力、即ち模範となる、大人の知的レベルも下がっているのではないでしょうか。今年の、大学入試のセンター試験の問題で、プログラムの問題があり、穴のあいた場所に命令を選んで当てはめるような設問がありました。なんとも、あきれましたが、大学生になるには、あくまで基礎的な知的能力を試すのが必要であり、何かを知っているか、知らないか、で分類することが果たして良い結果になるのか、これが、今日の日本の教育の現状なのですね。

 

森 俊明 (もりとしあき)
合資会社エイ・エス・イー コンサルタント

外資系コンピュータメーカのシステムズ・エンジニアとしてシステム設計、開発を経験し、のちにプロジェクト・マネージャーとして大型システムの開発に従事。現在、ITコンサルタントとして、企業のBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)、内部統制など、業務プロセスの整理を中心にコンサルティング活動を行う。BPIAでは、EPUBマニュアル研究会のコアメンバーとして参画している。

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