レポート 例会

BPIA 例会【2020年度第2回】(2020/2/19)『社会を変えるチャレンジ~地域医療と災害緊急医療の融合モデル事業~』

※レポートを追加しました(2020/02/21)

【レポート】

 こんにちは。BPIA広報委員会の石田です。今回は2月19日(水)に日本オラクルさんのセミナールームで開催された今期二回目のBPIA例会についてレポートします。

 今回の例会では、特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパンの代表理事である大西健丞氏をお招きして、「社会を変えるチャレンジ~地域医療と災害緊急医療の融合モデル事業~」というテーマでご講演いただきました。

 1996年、大西さんはイラクに入ります。国内で多くの方がイラクについて論じる中で、実際に現地に入った人が少なかった。だから自分がイラクに入ってみようと思ったとのこと。大西さんはトルコからイラクに入ったのですが、国境線ではさすがに緊張が走りました。なぜなら・・国境線ではトルコから1人、イラクから1人の交換で人の入れ替えをするのですが、イラク側から大西さんの交換相手としてやってきたのは、棺桶だった!からです。

 大西さんは人道支援の活動中、何度も死に直面していますが、20キロ以上の重さがかかると0.2秒で爆発する地雷を誤って踏んでしまったときには一瞬終わったと思ったとのこと。たまたま地雷が故障しており、命拾いをしたとか。イタリア製の地雷は地雷までおしゃれなデザインというのは面白かったです。

 特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパンは、海外活動地域15か国、職員360名以上、間接的な関わりの方を入れると1,000名以上で活動をしています。数十億円の活動資金をもっており、16回の緊急出動、14の国・地域で活動といった実績を持っています。

 1999年コソボ、東ティモールでの緊急人道支援を経験し、大西さんはNGOを支える社会的インフラの不足を痛感、NGOの活動を広げるためには、政府・経済界などと連携するための「基盤」が不可欠と考え、経済界・政府と連携してNGOをつなぐ、民間の緊急人道支援連携体制(=プラットフォーム)として特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパンが動き出しました。

 2001年にはアフガニスタンの難民キャンプをサポート。事業費2.5億円、JPFからの助成を活用し、アフガニスタンの難民のためのテントを約6,000配布しました。このアフガニスタン支援後から、ピースウィンズ・ジャパンの活動は日本国内に支援の中心が移っていきます。学者のメンバーを加え、国内の災害の可能性を深く学んだのもこの頃からでした。

 東日本大震災で1,000社以上の企業から協力を得て活動。当時から流行り出したソーシャルメディア(SNS)を活用して全国から寄付を集める活動をしたのも、ピースウィンズ・ジャパンが初めてです。現在ではヘリコプター3機を配備、ガルフストリーム・コマンダ695という専用機も配備しています。

 何より印象的だったのが最後のVTR。殺処分の対象になっていたワンコが訓練を経て、災害救助犬として活躍する映像なのですが、「これから自分が殺されてしまうのだろう」と怯えるワンコがとてもかわいそうで。ピースウィンズ・ジャパンは「ピースワンコジャパン」という殺処分ゼロの活動もされています。

 今回の最後に倉重会長がおっしゃった「頭をぶん殴られた気がした」という言葉も、参加者の皆さんの心の中に残ったのではないでしょうか。

最後になりますが、大西様、会場をお貸しいただいた日本オラクルの宇木さん、例会担当の田村さん、斎藤さん、BPIA事務局の川上さん、誠にありがとうございました。


【開催概要】

日時: 2020年2月19日(水)朝8:00〜9:30 (受付開始 7:45~)
場所: 日本オラクル株式会社
オラクル青山センター 13F 会議室
外苑前駅 4B出口直結
タイトル: 社会を変えるチャレンジ~地域医療と災害緊急医療の融合モデル事業~
講師: 大西 健丞 氏
特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)代表理事
公益社団法人 Civic Force 代表理事
Asia Pacific Alliance for Disaster Management(A-PAD)CEO
対象: BPIA会員限定
参加費: 3,000円(朝食代込。当日申し受けます)
進行: 田村 俊和 (BPIA理事 例会担当)
株式会社日経BP読者サービスセンター 代表取締役社長

 
※「例会」は、BPIA会長、会員経営者、又は外部経営者知見者を講師に招き、グローバル時代の経営を様々な視点で議論し、相互研鑽とビジネス交流を図るBPIA会員限定の勉強会となります。
 

◎講演概要

国内外で大規模災害が多発し、緊急支援における医療面のニーズが高まっている。
西日本豪雨災害やインドネシア・ロンボク島の地震では、ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)や姉妹団体が派遣したチームが、緊急支援活動や救護所で診療に携わった。一方、日本の地方では、山間部や島しょ部を中心に医療過疎が深刻な問題になっており、医師不足による診療所の閉鎖などが住民の暮らしの安心を脅かしている。
PWJは、両方の課題を同時に解決する一つのモデルとして、大学病院や自治体などとも連携し、平時は過疎地の地域医療に貢献しつつ、災害時にはいち早く国内外の現場に駆けつけて緊急医療を担うチームの組織化に力を入れている。肝要なのは、航空機や船舶などを運用できるロジスティクス能力と調整能力を併せ持つことである。
PWJや姉妹団体の取り組みを中心に、地域医療と災害緊急医療を融合させた新しい医療支援モデルの可能性と課題を探る。
 

◎講師プロフィール

大西 健丞 (おおにし けんすけ) 氏
特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)代表理事
公益社団法人 Civic Force 代表理事
Asia Pacific Alliance for Disaster Management(A-PAD)CEO

1967年大阪府生まれ。上智大を卒業後、英国ブラッドフォード大学の大学院 に留学し、国際政治・安全保障学修士課程で紛争解決や人道介入を学ぶ。
在学中、研究テーマとしたイラク北部・クルド人自治区での人道介入の実際を見るため現地を訪問し、欧米のNGOのダイナミックな活動に衝撃を受ける。
日本のNGOのイラク駐在勤務を経て、1996年にPWJを設立。
これまでにイラク、アフガニスタン、南スーダンなど世界29カ国での人道支援を指揮してきた。
2000年にNGO、経済界、政府の連携による国際人道支援組織ジャパン・プラットフォーム(JPF)の設立に参画。2012年には、アジア太平洋地域の相互協力による災害対応を目的としたAsia Pacific Alliance for Disaster Management(A-PAD)を設立した。
近年はPWJが本部を置く広島県神石高原町などを拠点に、国内の山間部や島しょ部の地域振興にも力を入れている。災害救助犬・セラピー犬の育成、殺処分ゼロを目指した犬の保護・譲渡などを行う「ピースワンコ・ジャパン」プロジェクトや、体験型観光パーク「神石高原ティアガルテン」の運営をはじめとする地域振興の取り組みで、PWJは2016年に日経ソーシャルイニシアチブ大賞を受賞した。
地域医療、教育、芸術などの分野にも活動を広げている。
主な著書に「NGO、常在戦場」(徳間書店2006年)、「世界が、それを許さない。」(岩波書2017年)など。

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▲「チーム大西」WEBサイト