会員コラム

師について謙虚に学ぶ

谷口擴朗

2011/7/27

去る2011年5月31日の「目からウロコの新ビジネスモデル研究会」とその後の懇親会に初めて参加し、皆様に活気と意欲を頂き感動しました。そのあと事 務局に連絡を取りBPIAに入会をさせていただき感謝しております。新入会員には投稿をお願いしているとの事ですので恥ずかしながら、 新入会員としての務めを果たさせていただきます。

年初めから政治に対する不信感がいや増す中、3・11の東日本大震災と東京電力の原子力発電所の被災による放射能問題で今や、被災で15千人以上の尊い命 が失われ、まだ5千人以上の行方不明者がおられ、加えて放射能汚染で7千人近くの方々が避難生活を未だ強いられているにも拘わらず、政治機能が麻痺してい るといっても過言でないほど、国民に対して何の夢と希望をも与えられない日本の政治家連中を見ていると、「もう政府に何の期待もしても無駄だ、自分たちで やれることを自ら頑張ってやっていくしか道は無い」と国民が思い始めた矢先、5・18に「なでしこJAPAN」が女子世界ワールドカップで伝統ある米国 チームを破り初優勝という快挙をやってくれました。一般には「辛卯の年」は世の中に予期できない悪いことが次々と起こる年だと言われていますが大震災や原 発事故等悲惨なことばかりでなく、耐えて、耐えてやるべきことを一生懸命にやっておれば困難を乗り越えられてすばらしいことが起こるということを教えてく れました。

東日本大震災以降、世界中が日本の復旧・復興の動きに注目をしています。政治家ではなく、日本国民の努力する姿に「悲惨な出来事があっても 挫けず、耐えて秩序正しくお互いに助け合い、前向きに生きようとするすばらしい国民だ、世界の中で最後まで残すべき国民だ」と評価されている話を聞きまし た。まさに「なでしこJAPAN」がこれを事実として世界に証明したようなものです。日本の政治家連中に「なでしこJAPAN」の一人一人の涙ぐましい努 力とチームワーク・結束力と自分達のそれと比較して謙虚に反省し、学んでくれよと言いたくなるのは私だけだろうか。

日本人の内に秘めた立派な能力を今の時期にこそ、もう一度先人達からも学び直さなければならないのではないかと改めて思います。

今から20年程前になります。私事になりますが銀行で支店長をしていたころ、お客様に勧められ、観世流の謡曲のお稽古を始めました。その顧 客曰く、「銀行の支店長は、①部下からはもちろん、お客様からも支店長、支店長と呼ばれてついつい頭が高くなってしまう人が多い。そのためには何かお稽古 事を始めて、「師」につくこと勧める。師について謙虚に学ぶことが大事だ。②次に支店長となれば人前で講演やら何やら話をする機会が多い。人前では「声」 がよく通らなければいけない。それには腹式呼吸で発声をしなければ駄目だ。③もうひとつは、健康だ。支店長職は激務だから、それに耐えられるような健康な 身体が必要だ。この三つを満足させるお稽古事がある。それは謡曲(能)だ。よい先生を紹介するのでぜひ舎弟になりなさい。」と。

この方がその支店の後援会会長だったから否応なしにこの世界に入ってしまった。 入門して20数年その魅力に取り付かれて今日まで来ています。今は東京で単身赴任中の為、しばらくお稽古を中断しているが、機会があれば観世能楽堂などに 足をはこんでいます。世阿弥の「花伝書」や「花鏡」も読んでいると教えられることが多い。若者への指導のあり方、観客への心遣い、自分自身の道を目指す心 構え等々。最近の若い経営者は、能力の高い人が多いので、ぜひ日本の伝統芸能にも興味を持てばご自身のよい修行になるのではと思います。

話は変わりますが、私がKDDI時代に札幌勤務をしていた時のことです。札幌商工会議所主催の会合で「札幌をもっと活性化するためにどうすればよいか」と いうテーマで議論したとき、「沖縄や他の地区では観光大使を置いて人を呼び寄せる方法をとっている。札幌もすばらしい処だから、道外から同じようにして人 を集客してはどうか、旅行業者に任せるだけでなく、商工会議所自らも活動すべきでは?」と言ったりしていたものですから、札幌観光大使制度が平成16年に 出来て以来、言い出しっぺの一人として今も、札幌観光大使をずっとボランティアでやっております。ちなみに、札幌観光大使の条件は①道外に本社がある札幌 支社のトップで、②札幌が大好きな人ということです。(ただし札幌商工会議所の会員である必要があります。2年毎更新でOBでもOKです。)札幌に立ち寄 りの折に、観光大使の名刺を持参した方には記念品が貰えます。札幌に行かれる方はぜひ私の観光大使の名刺をご活用ください。

<プロフィール>

谷口擴朗(たにぐちかくろう)
京セラコミュニケーションシステム株式会社(東京支社) 顧問

昭和20年生まれ。京都大学法学部卒。昭和43年 株式会社住友銀行(現三井住友)入行。
同駒川町支店長、梅田新道支店長を経て、平成3年 日本高速通信株式会社 総合企画室長、経営企画部長、大阪支店長、平成 7年 同取締役。平成10年  国際電信電話株式会社と合併したKDD株式会社 取締役大阪支店長。平成12年 第二電電株式会社、日本移動通信株式会社と合併した株式会社ディーディー アイ 理事 関西副支社長。平成13年 KDDI株式会社 理事東海支社長(4月KDDIへ社名変更)、平成15年 同常務理事 北海道総支社長。平成 17年より株式会社KDDIテクニカルエンジニアリングサービス取締役執行役員専務 西日本本部長を経て、経営管理本部長。平成20年7月より現職。。

舞囃子[鶴亀]の舞台