会員コラム

人も企業も、地元に戻ろう!

市川 勤

2011/1/20

団塊世代の退職が騒がれたのは、2007年。すっかり忘れ去られてしまったのは、その影響がそれほどでもなかったからか。それとも大量退職が、雇用延長により、その影響が薄められたのか? 大学生の就職率悪化に雇用延長の影響は及んでいるのか?
消費税率のアップ、年金の切り下げで、その影響がはっきりしてくるのだろうか。

5年前から地元で活動をしてきた経験から、社会貢献したい若者も多くいるのがわかった。右肩上がりの繁栄と豊かさを追求してきた我々世代より、心優しい、 豊かな感性を持つ層は多いのかもしれない。こんな若者とコラボレーションして、地域で事業を起こしていくことが、これからの日本の活性化に寄与すると信じ て、活動をしている。

じもとでは、大型商業施設がでてきたために商店街は空き店舗だらけ。農業でも不耕作農地は増え、森林は伐採されて、緑の環境は蝕まれている。近い将来に予 想される食糧難の時代を迎えた時に、どうするのだろうか。儲け主義、効率社会の行く末はどうなるのかなどと、孫世代の心配をしている。

そんな地域での活動に、多彩なビジネス経験をしてきたシニアの出番と思うのだが、地域経済を支えるビジネスを担おうとする人は少ない。すでに疲れ果てて地 域に戻るからなのか、遊び歩く人も多い。あるいは、社会貢献とはいえ、気ままに行えるボランティア活動を好む人が多いのか、じもとを元気にするはずの人的 資源が多く眠っている。

グローバル企業のコスト競争で、製造業を中心とした雇用が日本から失 われた。失われた雇用をどうやって取り戻すのか? 地方の一次産業に戻すのか?
先進国が共通で抱える問題に直面している日本。これは日本のチャンスでもあ る。地方を再生するために人的資源を振り向けられないか。世界で戦える人 は、都会と世界中で働いてもらい、戦えない人・戦いたくない人は、地方で知 恵を出して働くというのはどうだろうか。

グローバリズム、金融資本主義、1・2位しか生き残れないなどの苛酷なビジネス社会の現状が、文明の進歩の結果として素晴らしいものなのかと考える昨今である。弱肉強食の世界は、人間社会の進化した姿なのだろうか、成熟した社会なのだろうかと。

地域では新しい公共の名のもと、土木事業から名を変えた助成金が降ってくるようになり、その争奪戦が、コンサル会社を巻き込んだ地域同士で始まりそうである。
今年はNPOを設立し、その争奪戦に参戦しようかと考えているところだ。地域にはビジネスで鍛えられた知恵が、まだまだ回ってきていない状況なので、大儲けはできないが、雇用を生み、社会貢献できるビジネス領域はあると感じている。
坂の上の雲は、地域にあると信じて、皆様の参戦をお待ちしています。

<プロフィール>

市川 勤 (いちかわ つとむ)
株式会社じもとのneco 代表取締役社長 / BPIA監事

1950年東京生まれ。受験科目が9科目の時代の都立高校を出て、一浪(ひとなみ)で大学へ。大学卒業後自動車メーカー、IT企業を経て、2006年 コミュニティビジネスを目的に「株式会社じもとのneco」を創業、2008年「有限責任事業組合じもとメディア」(※)を仲間と設立する。シニアが集う場づくり、地域を再発見する歴史ツーリングなど手がけている。来年度は、行政の広報誌を市民協働で作成する試みにチャレンジの予定。

奥日光 湯滝の上(湯ノ湖)にて
(※)有限責任事業組合じもとメディアは、埼玉県内ではじめてのクリエーターネットワーク型のLLP(有限責任事業組合)。LLPの仕組みを活かし、メディア事業を通じて地域の活性化に貢献。地域の文化情報の発信拠点として親しまれている。