Webビジネス研究会 レポート 研究会 2014年度 研究会/講演会

【レポート】 第12回 Webビジネス研究会

テーマ:これからどうなる?EC業界。
    最注目の急成長企業シー・コネクト代表が語る、ECと自社の未来とは。
講 師:嶽本泰伸 株式会社シー・コネクト 代表取締役
2014年1月15日(水)16:00~19:00 / プライスウォーターハウスクーパーズ

12-2皆様、こんにちは。BPIA(ビジネスプラットフォーム革新協議会)/Webビジネス研究会ナビゲータの石田麻琴です。今回は、1月15日にプライスウォーターハウスクーパーズさんのセミナールームで開催させていた、第12回Webビジネス研究会「最注目の急成長企業シー・コネクト代表が語る、ECと自社の未来とは。」についてレポートさせていただきます。

今回、ゲスト講師にお招きしたのは、株式会社シー・コネクトの代表取締役である嶽本泰伸さんです、嶽本さんは、10代の頃から起業を視野に入れ、これまでに国内・海外を問わず10種以上の仕事をご経験されてきました。2009年に、株式会社シー・コネクトを創業され、現在5期目。嶽本さんご自身は、1981年生まれで、現在32歳。起業をされた時点で、ご結婚され、お子さんもいらっしゃったということです。なんというチャレンジ精神。嶽本さんの好きな食べ物は、牛乳。創業5年目にして、すでに40名以上のスタッフを抱えていながら、嶽本さんは非常に落ち着いていて、話される口調も非常に柔らかい方です。

株式会社シー・コネクトが運営されているメインのサイトは2つ。互換インクカートリッジ、リサイクルインク、トナーカトリッジを販売している「インク革命.com」。そして、地球にやさしい便利商品・自然は商品を販売している「えこねっと」。この2つです。私も、インク革命.comの存在を知ってから、毎回インクカートリッジを購入しています。私が自宅で使っているプリンターは、CanonのPIXUS-iP100というものなのですが、純正のものだと定価1,500円ほど。値引きされていても1,000円ほどの価格です。しかし、インク革命.comの互換タイプだと、わずか480円。50%ものコストダウンになります。互換タイプのインクというと、どうしても商品の不具合を懸念してしまい導入の足かせになってしまうところですが、その心配もなく、きれいに使えています。

嶽本さんが、シー・コネクトを創業した、2009年といえば、Eコマース業界の流れが変わった年でした。多くの事業者がネットショップに取り組むようになったのが2009年。そのため、それまでの需要と供給のバランスが逆転し、供給側が加速して増え続けるようになった年です。潮流が変わったんですね。市場では、価格競争が起こり、広告の費用対効果も悪化していきます。それまで、Eコマース事業者に商品を卸していた会社の多くが、自社でEコマース事業に取り組み始めたのもこの時期です。本格的にサービスが激化し、先行者有利の状況が薄れていったその年に創業した会社が、なぜ成長を続けているのか。楽天市場やYahoo!ショッピングなどのECプラットフォームを選択せず、なぜ最初から自社サイトにこだわっているのか。そして、なぜインクカートリッジという商材を選択したのか。私は非常に興味がありました。

嶽本さんの講演は、Eコマース業界の現状の話からスタートしました。2014年のEコマース業界の流れとして紹介されたのは、昨年Yahoo!が発表した、Yahoo!ショッピングのストア出店料・売上ロイヤルティの無料化、いわゆる「eコマース革命」です。また、LINEがショッピングモールの構築を進めており、2014年の春にも大規模なリリースがありそうです。その中でも、嶽本さんが注目のポイントとしてご紹介されたのが、「オムニチャネル」「スマホ対策」「SNSマーケティング」の3点。ひとつ目は、「オムニチャネル」。昨年はセブンアンドアイグループの「300万点EC化構想」が話題になりましたが、リアルとネットの購買行動に合わせて、物流・商流をつくっていくアプローチ。これが2014年の1つのポイントになるだろうと。次に、「スマホ対策」。まだまだ本格的にスマホ対策に乗りだしていないサイトも多く、またパソコンサイトの焼き直し的なスマホ対策も多いが、対策方法はターゲットユーザ層と自社で取り扱っている商材によって戦略を構築すべきで、「インク革命.com」の様なプリンターの消耗品がメイン商材の場合、本質的には1度パソコンサイトを利用した人のリピーター施策としてスマホを対策するのが良いのではないか、という話。そして、「SNSマーケティング」については、twitterやfacebookなど、そのリアルタイム性を利用して情報を出しながらその効果を測っていくということ、また「インク革命.com」や「えこねっと」などシー・コネクトのサイトを利用してくれているお客様にはコスト削減の意識が高い方多いので、コスト削減についてのアイデアなどもSNSを通じて発信したい。などの、お話をされました。

「インク革命.com」や「えこねっと」が、自社サイトでのネットショップの出店を選択している理由にもつながるところとして、Eコマース業界における、モール型と自社サイト型のメリットとデメリットについてもお話いただきました。モール型は、楽天市場やYahoo!ショッピング、DeNAショッピング、Amazonなどのショッピングモールにネットショップを出店すること。自社サイト型は、ショッピングカートを自社で開発したり、ASPのサービスと契約したりして、インターネット上に路面店を出すこと。嶽本さんの場合は、後者の路面店を出すことと、ショッピングカートも自社で開発していく事を選択したわけですが、お話しされた自社サイト型のメリットのうち2つを紹介します。

ひとつは、サイトのブランディング上、自社サイト型を選択した方が良いこと。楽天市場やYahoo!ショッピングで買ったことは覚えていても、買った「ショップ名」まではよほどのことがない限り、お客様に覚えてもらうことはできない。確かに、私も昨年結婚式の準備等々で楽天市場のショップをいくつか利用しましたが、どのショップを利用したか、一切覚えておりません。モール型でも楽天市場やYahoo!ショッピングを選択した場合、ネットショップサイトのデザインやページの作り方で「少しは」個性を出すことができるが、商品ページ飛んでくるまでの導線や、商品の注文画面などバックヤードについてはプラットフォーム側の統一のデザインを使うことになるため、ブランディング上弱い。さらにAmazonの場合、自動販売機のような物で、ブランディングの観点からは致命的、WEB上での接客もほぼ不可能というお話にも納得でした。

もうひとつが、ポイントの発行について。モール型でネットショップをおこなう場合、お客様に付与するポイントは単純に商品の価格を値引きしていることと同じことになってしまう。自分のネットショップで発行したポイントが、ショッピングモール内の他店で使われることになるわけです。しかし、自社サイト型でネットショップをおこなう場合、お客様にいくらポイントを付与したとしても、自分のサイト以外で使用されることはありえない。だから、ポイント付与というものを商品の「原価」として考えることができる、ということです。つまり、自社サイト型を選択する方が、モール型を選択することに比べて、よりアクティブなプロモーションを打つことができるというわけです。

そして、なにより嶽本さんがすごいのは、2009年に会社を創業してEコマース事業を始めた時点で、このモール型・自社サイト型のメリットとデメリットを「ほとんど予測できていた」ことです。どうしても、自社サイト型はサイトとして認知されるのに時間がかかります。モール型の方が、お客様を集めることについては時間がかかりません。その中でも、嶽本さんは自社サイトを選んだ。しかも、ネットショップを立ち上げたその日から、お客様から注文がきていたというのが驚きです。おそらく嶽本さんは、商品の利益率から想定される広告費の限界値とリターンの可能性を、ネットショップの立ち上げ前から計算できていたのだと思います。「勝てる」ビジネスモデルを徹底的に考えてから、実行に移す。その「イメージ力」が嶽本さんの最大の強みなのだと思いました。

質疑応答の時間をたくさんとっていただき、使った時間は45分間。参加された皆さんからあがった質問の数は15問以上。過去のWebビジネス研究会でも最多でした。その中で、私も、「なぜ、インクカートリッジという商材を選択したのか?」について質問してみました。嶽本さんがおっしゃっていたのは、「ネットショッピングをする人はパソコンを持っているはず。パソコンを持っている人はプリンターも持っている可能性が高い。プリンターのインクが切れると、パソコンのモニターに『インク切れ』の表示が出るので、その場でインクのネット販売を探してもらえるのではないか。さらに「体積単価」や「重量単価」という点でも、インクカートリッジはネット通販上有利。コストも高いし、リピーターになってもらえる可能性も高い」ということ。うーん、正に「勝てる」ところを考えることに徹底している。そんな嶽本さんのお話しでした。

第12回Webビジネス研究会、いかがだったでしょうか?今回もたくさんの方にご参加いただきました。また、今回の研究会で会場をお貸しくださったプライスウォーターハウスクーパーズさん、ありがとうございました。次回のWebビジネス研究会は3月10日@オラクル青山センターでの開催を予定しています。内容等、決まり次第、BPIA事務局よりご連絡を差し上げます。最後になりましたが、ゲスト講師の嶽本さん、ご参加していただいた皆様、会場をご提供いただいたプライスウォーターハウスクーパーズ内田会長、BPIA事務局の青山さん、臼井さん、誠にありがとうございました。それではまた次回、お会いしましょう!

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石田麻琴 株式会社ECマーケティング人財育成 代表取締役社長

7-1<いしだ・まこと> 早稲田大学第一文学部卒業後、インターネット通販ベンチャーに6年間勤務。ネットショップ店長として、仕入・マーケティング・システム構築・物流などを1 人でこなし、1年間で売上7,000%アップ、年商3億円を実現。インターネット通販を中心としたマーケティング支援/マーケティング人財の育成を目的とした株式会社ECマーケティング人財育成を設立。有力EC/Web企業を支援。船橋情報ビジネス専門学校特別講師など人材育成にも注力。その他、商工会議 所での講演、新聞やWebでの連載など。
ご紹介;連載中のITMediaエグゼクティブコラム(http://blogs.itmedia.co.jp/ecda/

<参加者感想>
●ありがとうございました。Eコマースについて、大変深い内容で、参考にしてビジネスができると思います。
●自社サイト運営ノウハウが内製化を中心とし、蓄積で人財育成しているところが素晴らしい。
●とても良かったです。
●大変参考になりました。最初のビジネスモデルへの考え方が素晴らしい。
●今年春Webサービスを開発中なので、色々参考になりました。当社も自社サイトなので工夫してPDCAを回して行きたいと思います。ありがとうございました。
●色々と知らないこともあり勉強になりました。ありがとうございました。
●自社サイトの運営に特化し、多くのノウハウを業務の内製化によって蓄積されており、さらに次の展開もしっかり考えられていて感動しました。また、人財育成やマネージメントに関しても次のステージに上がることを見据えて行われている点についても勉強になりました。なぜ、リピート客が多いのかがよく分かりました。
●今まで自社サイト型のECサイト事業を行っている会社としか接点がなかったので、モール型のお話はとても参考になりました。
●自社サイトとモールのメリデメがよく分かった。
●自社で運営してビジネスを展開されていくロジックが明確で素晴らしいと思いました。行動してマーケットを切り開いていくことも参考になりました。
●自分でECサイトを構築する意味がよく理解できた。日本製品を海外に売るサイトを是非お願いします。
●内製化の徹底により強みを磨いているということに感心しました。辛抱強いと思います。
サイト運営のスピード感の重要性を再認識。
●自社で全てやるなど無理だと思うようなことなどもやられていてすごいと思いました。また、ページを見て勉強できることがたくさんあると思いました。
●実践し成功している迫力を感じました。日本発の成功ドリームモデルとして、留学生にも紹介させていただきたい。