2020.3
企業活性化研究会では、月1回の定例研究会で、”働き方改革による企業と地方の活性化”、”イノベーションと地方創生”、”Society 5.0(未来社会創造、未来投資戦略、第4次産業革命、AI化等)時代における社会動向変化の働き方への影響”などのテーマを議論するとともに、年数回の企業訪問や経営者ヒアリングを実施し、その一部は、ホームページなどの媒体を通して公開してまいりました。
定例研究会では、上記の議論に加えて、2018年7月に公表した「次世代が求める働き方とは」をもとに、そこで記載した各項目を深堀するとともに、働き方改革、生産向上、M&A、人事施策、イノベーション、セキュリティ、AIや自動化などの先端技術や生産技術など、”企業活性化”に関連したテーマで公表されている資料(報告書、雑誌およびオンライン記事、ホームページ、学術論文など)を毎回4〜5編読み、記述内容について議論してきました。
今回、この1年間に議論した資料のエッセンスを「企業活性化の勘どころ」として整理いたしました。
「”企業活性化の勘どころ”とは」
“月例研究会で最近1年間に参考にした資料等のエッセンス(注目した文脈等)”
必ずしも自社にあてはまらない項目や適切でないケースや表現もあるかと思いますが、議論の参考として考えていただければと思います。(なお、研究会でこの1年間に参考にした資料は最後に示します)
経営課題、企業理念
脅威や被害が“量的および質的”に急増しており、バリューチェーン全体でリスクやセキュリティ問題の共有が必要である。組織や企業の枠を超えた連携と新たな発想で社会課題を解決する姿勢が必要となる。
製品の完成度や高品質も大切だが、近年は開発、製品化、事業化のスピードが求められている。生産性の低い企業やスピード化に対応できない企業を変革するには、尖がった才能を重視することも重要となる。
複雑な社会課題に取り組むには、まず、不安や危機を明確にして、克服すべきポイントを整理する。どちらかといえば、技術面を優先して課題設定する傾向があるので注意を要する。
脱下請けに向け、経営者自ら変革を主導して多品種少量生産に転換し、社員のモチベーションをあげる施策を実践した中小中堅企業が成功を収めているケースがみられる。
新しいデジタル戦略によるビジネスモデルの模索(自社のプラットフォームを他社に提供、デジタル環境を使ったサービスやアドバイスの提供など)による攻めの経営が有効な場合がある。
企業が生き残るためには、高次のパーパス(商業上の目標を超えた存在意義)を見出すことが必要である。
これからの企業の目的は社会への奉仕であり、健全な環境と経済的チャンスの提供を推進すべきである。地方では、地域との共存共栄(例:地域に誇れるものづくり)を目指すことも重要となる。
日本企業の多くは完璧主義のためリスクを徹底的に排除する。型にハマると強いが非効率でもある。過去の成功体験を捨て、これまでの継続性から抜け出すことが必要である。
ブランド戦略としては、商品力や技術力に加え、コンテンツにストーリーを持たせることで、ブランドイメージをつくりこむことが必要である。
働き方改革、人事施策
働く人のハピネス(幸福度)が注目されている。企業を組織の内側から活性化する手段として、ヒトの行動要因を定量的にデータ化して分析し、施策に結びつけている企業もある。
働き方革新は、新しい価値の創造、イノベーションの創出を加速して、生産性を高めることで経営理念を実現することである。壮大なゴールを設定すると失敗する可能性が高い。会議時間などは半分にできる。
働き方改革は、オフィスで働く人だけでなく、工場や現場で働く人の改革も目指すべきである。人の動作を支援するシステムの導入、作業手順の標準化とマニュアル化などを推進する。トップ主導のアプローチが成功のカギとなる。
協創(共創)の促進、外部人材の活用など、自力自前主義は後退している。一方で、人材を自前で育てる日本企業を評価する海外企業や有識者も多い。
価値創造や多様性の確保のためのひとつとしてアルムナイの活躍を求める方法がある。社内と社外の知識を持つアルムナイからは有益な意見が得られる。アルムナイは正社員である必要はなく、個人と企業が対等な関係を構築することがアルムナイ活用のカギとなる。
生産性向上には、人事を戦略部門とし、個を輝かせる人事施策を推進することが必要である。
インキュベーション、イノベーション
歴史のある大企業が、自社モデルへの危機感からインキュベーションを支援し、ベンチャーキャピタル的な投資を実施して、協創による自社事業の新展開を目指すケースが増えている。
研究開発や製品化のための資金の集め方が多様化している。クラウドファンディングなどでテストマーケティングし、購買行動データ等を収集分析して、事業化を支援する新興企業が上場するまでに成長している。
オープンイノベーションの目的のひとつに、社内リソースでは出ないアイデアや発想の補完がある。事業の将来性に危機感をもった企業が既存事業から脱却するには、アイデアソン、ハッカソン、アクセラレータープログラム、ビジネスコンテストなどの手段を活用する。
自分に自信がある人、その仕事を面白いと思える人がイノベーションの推進者となり得る。こうした人をどのように集めるかが課題となる。
大きな構造改革やイノベーションを推進実践するには、トップの経営者が、関係者の合意を得られない場合にも実行できる決断力のあることが必要である。
イノベーションは「強みを生かして、新しいビジネスを立ち上げられるか」が本質。中小企業の経営者が、テクノロジーや製品の観点だけに注目する傾向には注意が必要である。
改革には現状や技術の可視化が重要であるが、一方で、未来の変化を予見し、バックキャスト手法のアプローチでイノベーションを進めることも必要である。
オープンイノベーションは地方の課題解決の手段となる。オープンイノベーションエコシステムの成立の要因は、テーマ、拠点、リーダー役、外部リソースとなる。
協創において重要なのは、外部の人間だからこその存在意義である。社外の尖った人材だけでイノベーション組織をつくって企業風土を変革した事例もある。チャレンジを推進する社風を定着させるべきである。
事業継承、M&A
日本の大企業のM&Aでは、“買い”に注力しすぎるために成功率が低いことを肝にすべきだ。買った企業の経営改革を主導し企業価値をあげることが重要である。M&Aの成功には、財務的な成功と戦略的な成功がある。
M&A成功のポイントは、適正価格、PMI(Post Merger Integration)、シナジーの3つ。PMIのステップは、理念戦略の策定、経営基盤の統合、業務基盤の統合、意識
企業風土の最適化となる。
M&Aでは、買収の目的を明確化、「経営の見える化」を徹底、適切なガバナンスを前提とした任せる経営を実践する。買った会社を大きく育てることを考える。
中小企業の事業継承では、ヒト、モノ、カネで診断し、余力のある段階で決断をすることが重要となる。市況の急激な変化や過大投資により経営が急激に悪化することに注視する。
最近1年間の研究会で取り上げた資料、記事、文献等の例
我が国のオープンイノベーションの課題・阻害要因・成功要因(オープンイノベーション白書 第2版 )
Society 5.0時代のオープンイノベーション、スタートアップ政策の方向性
(経済産業省 研究開発・イノベーション小委員会)
パラダイムシフトを見据えたイノベーションメカニズムへ ― 多様化と融合への挑戦 ―(経済産業省 研究開発・イノベーション小委員会)
事業会社と研究開発型ベンチャー企業の連携のための手引き(経済産業省 産業技術環境局)
DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(経済産業省)
過去10年で最も優れた変革を遂げたトップ20企業(ハーバード・ビジネス・レビュー)
クラフトビールとアルムナイの不思議な関係(HRTechナビ)
地方創生×オープンイノベーションのチカラ(JBpress )
日立×信州塩尻、協創の3日間(日立SDGs協創ワークショップレポート)(Executive Foresight Online:以下 日立EFOと表記)
パナソニックを変える“精鋭部隊”世にないものを生む思考回路(日経クロストレンド)
実用レベルに達したAIを活用する「顧客接点DX」の未来(Bizコンパス)
対談 データのハピネス、感性のハピネス(日立EFO)
リクルート流働き方改革は、小さなR&Dの積み重ね(日立EFO)
リクルート 遺伝子への挑戦者(日経電子版 5回連載記事)
残業なし奮戦記 “味の素の働き方改革”(日経電子版 5回連載記事)
倒産危険度ランキング(ダイヤモンド記事)
生産性向上と輝く一人ひとりを両立させるHRテック (日立評論 Vol.100, No.04 )
IoT時代のセキュリティ 情報通信研究機構理事長インタビュー(日立EFO)
未来への一歩 イノベーションの「実行」に向けて(日本能率協会 日本企業の経営課題2018 )
オープンイノベーション推進事例(オープンイノベーション白書 第2版 第4章)
富士フイルムに学ぶ 脱「イノベーションのジレンマ」スタンフォード大学 オライリー教授に聞く」(日経電子版 スタンフォード 最強の授業)
マクアケのさらなる挑戦 (サイバーエージェントHP)
米国、中国の最新デジタル化動向と日本企業が目指すべき成長戦略と」(NECwisdom)
ファクトフルネス(日経BP社)、著者インタビュー(東洋経済4月6日号)
事業継承と起業家育成 日本マネジメント学会
DX時代のクロスボーダーM&Aを成功に導くPMI インタビュー 連載記事(日立EFO)
シナジーを最大化するJTのM&A 元JT副社長インタビュー 連載記事(日立EFO)
M&Aを成功に導くために 早大客員教授インタビュー 連載記事 (日立EFO)
話せば生まれるコラボ 富士フイルム流のデザイン思考(日経電子版 キャリアコラム)
トヨタがプリウスで圧勝し、ソニーがiPodに惨敗したブランド戦略の明暗(週刊ダイヤモンド)
「踊る町工場」vs「遊ぶ鉄工所」修羅場経営者初対談(1~9)(ダイヤモンドオンライン)
「能作」社長が初告白 営業なし、社員教育なしで 社員15倍!見学者300倍!さらに売上10倍!富山の片田舎に、なぜ年間12万人も殺到しているのか? (ダイヤモンドオンライン)
デジタルトランスフォーメーションに成功する企業は何が違うのか 6つの戦略から評価する(ハーバード・ビジネス・レビュー)