レポート 企業活性化研究会 企業活性化研究会(2018年) 研究会2018 研究会/経営サロン

企業活性化研究会 企業訪問レポート 鶴巻温泉 元湯 陣屋


企業活性化研究会では、月1回の定例会のほか、年数回の企業訪問を実施しています。今回の企業訪問では、自社開発によるIT化、IoT活用による生産性向上や経営改革、サービスの質の向上、働き方の改革などで、たびたびマスコミにも取り上げられる鶴巻温泉元湯の陣屋に伺いました。新宿から小田急で1時間という立地にある陣屋では、まず、ランチ会席をいただいたのち、「IT活用による旅館改革とその展望」と題し、陣屋の再生と事業強化への奮闘、旅館業改革の情熱について、代表取締役女将の宮﨑知子さんからお話をうかがい、施設の見学をさせていただきました。

ビジョンと事業展開

陣屋グループでは、“旅館を憧れの職業に”をビジョンとし、具体的には、①お客様に喜ばれる仕事であること、②働くスタッフとその家族が幸せであること、③生産性の高い高収益企業であること、④世界一の何かを持っていること、⑤夢を持ち続けられる仕事であることをめざして事業を展開してこられました。
陣屋の事業   宿泊、日帰り(食事、入浴、宴会)、婚礼、JINYA EXPO
陣屋コネクトの事業  システムと経営改革モデルの提供

旅館存続の危機から脱却できた経営改革のポイント

陣屋のコンセプトでもある「物語に、息吹きを。」の実現のため、高付加価値・高単価をめざし低稼働率でも利益の出る構造にすること、ブライダル事業の開始、おもてなしを実現するための貴賓室の改装活用などの施策を展開。見える化(情報の全体共有)、PDCAサイクルの高速化、CRMの導入に加え、会議時間などを削減して接客の時間を増やすことなどをめざし、システムの自社開発を選択されました。ここで開発されたのが、旅館に特化したクラウド型の基幹システム“陣屋コネクト”です。

IT化、IoT活用による本業の充実

 陣屋コネクトでは、会計管理や勤怠管理、経営分析、顧客管理、予約管理などの事務基幹系のほか、センサー(人感、温度、水位、カメラなど)技術や音声認識、音声合成を活用した効率化や自動化が実現されており、風呂の温度や水位などの最適化、車のナンバーの自動認識による来客把握(接客改善)、タブレットによる従業員全員の情報共有など、業務改善に役立つ機能が追加され進化を続けています。陣屋コネクトは現在、全国240以上の施設で導入されています。こうしたシステムによる効率化や生産性向上により、料理の質の向上、おもてなしのオペレーションの改善などに注力できるようになります。

週休三日で働き方も変化

 もう一つの陣屋のアプローチに、“CS(顧客満足)ES(従業員満足)Profit(利益率)を世界一に”という考えがあります。旅館に休日なしという概念を覆し、週休三日を実施(原則、月火水を休館日)し、営業日の顧客対応を充実。従業員には有給休暇完全消化を実現。さらには、賃上げを含め、従業員向け施設のリニューアル、研修の充実などの種々の施策を実施することで、従業員の定着率も向上したとのことです。さらには、休館日を設けることで、ドラマや映画の撮影が多くなり、設備の保守が効率的にできることなどの付帯的な効果も出ています。このような施策をとりながらも、生産性向上により、利益率が大幅に改善していることは素晴らしいことです。地方創生のモデル事例としてもメディアから注目されています。

旅館ホテル間のたすけあいネットワークにも挑戦

 新しい試みとして、JINYA EXPO(Jinya EXchange POrtal Service)があります。陣屋コネクトのユーザ間での施設の枠を越えた助け合いで、小規模旅館等でも大手チェーンに負けない仕組みづくりです。食材や備品の共同仕入れ、生産者からの直接購入、人材交流、教育、企画や話題づくりなどを目指したネットワークで、リソースの出品や交換、施設メンテナンスやWEBデザイナーなどの関連事業者とのビジネスマッチングの機能があり、全国に展開中とのことです。

最後に

 今回、代表取締役女将の宮﨑さんの素晴らしいお話を聞き、企業の成功には、経営者の指導力や情熱、バイタリティ、そして数々の苦難に対して挑戦していく姿勢が重要であることを再認識いたしました。また、慣習にとらわれない改革の企画や実践にあたっては、異業種での経験が原点にあったかとも推測されます。陣屋コネクトでは、実際の業務を知り尽くした人がつくるシステムの強さを感じました。見える化やPDCAサイクル、IoT活用などの施策は、一般の企業でもまだまだ実践できていないところも多いと思われ、大変参考になりました。今後の陣屋グループの進化発展にも注目していきたいと思います。
 訪問に際し、陣屋の皆さんには大変お世話になりました。ここに、あらためてお礼申し上げます。

 (岡田 正志 B&Tコンサルオフィス 代表)