レポート

【レポート】“企業活性化とモチベーション”に関するワークショップ 開催概要とグループ討議のまとめ


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開催趣旨

これまで、BPIA企業活性化研究会では、企業活性化をテーマに、いくつかの企業を調査してきましたが、企業活性化の共通の要因がモチベーションにあることをあらためて確認いたしました。また、モチベーション高揚で多くの企業が悩んでおられる実態も明らかになりました。そこで、企業の経営や人事などに関係している方で、モチベーションに関心のある方々に集まっていただき、企業活性化におけるモチベーションのあるべき姿について議論し、モチベーション高揚の施策へとつなげていただくことを目的として、ワークショップを開催することといたしました。

 

開催日時等

主催: ビジネスプラットフォーム革新協議会(BPIA)企業活性化研究会
日時: 2013年10月31日(木)13:30~18:30
場所: 首都大学東京 秋葉原サテライトキャンパス会議室
参加者:20名

 

プログラム

13:30~開会挨拶
坪本裕之 首都大学東京
岡田正志 企業活性化研究会座長

13:35~基調講演「モチベーション・マネジメント」
倉重英樹 株式会社シグマクシス 代表取締役会長兼社長(BPIA会長)

14:35~話題提供
岡田正志 B&Tコンサルオフィス(企業活性化研究会座長)

15:00~グループワークの進め方
串田昭治 クシダ経営研究所

15:05~グループ討議、討議内容発表、全体討議、まとめ

 

参加者事前アンケートの結果

関心の高いテーマを選択してもらった結果の順位は以下の如くとなった。

① 従業員満足度、働き甲斐、社員の自立、コミュニケーション活性化への施策
② 企業理念や経営理念の共有、経営革新の姿勢、経営者の意識
③ 人材の育成、教育制度、能力開発等の充実度
④ モチベーション2.0&3.0、知的関心、価値観
⑤ 投資への姿勢、事業革新、ビジネスモデル革新、新規事業開発の姿勢、提案制度
⑤ 評価制度とその運用、登用と昇進、成果の見える化、納得性や明確性
⑦ 雇用や採用の制度、高齢化社員の処遇、中間管理職、人材の流動化、組織、スタッフのあり方
(⑤は同数)
このアンケート結果から、グループ討議のテーマを①、②、③に設定した。

 

グループ討議の概要

グループA

テーマ: 企業理念や経営理念の共有、経営革新の姿勢、経営者の意識
コーディネータ: 串田昭治
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当グループには経営者が1名しか参加していなかったが、他は部長、課長クラスだったので自社の経営を客観的見た立場とまたは直接的に感じていることを踏まえて取り組んでいただいた。
結論的には以下の6点のテーマが浮き彫りになった。

1.課題となった主テーマ

(1)企業の方向性が示されているか
(2)経営の在り方が共有できるか
(3)事業のアピール度が示され共有できるか
(4)社員のやる気が共有できて高揚できるようなものか
(5)社会へのアピールが出来る内容で社員としても共有できるか
(6)社会貢献が読み取れる内容で、全社員が意識でき共有できるものか

2.その課題となった理由

(1)企業の方向性

①    表現が曖昧や格好だけで明確に表されていないため個人の解釈がバラバラである。
②    社員が自信を持って社外に話せる、理解できる内容ではない
③    具体的な方向性が不明確で、社長の思い込みで表現されているため腑に落ちていない。
④    中長期的な展望が考えられていない。
⑤    社員全員の個人にアピールが出来ていない(絵に描いた餅、社長がなんか言っているねの感など)

(2)経営の在り方

①    一般的で独創的でない
②    経営者の役割を明確に定めていない。自分一人で背負っていると勘違いしている。
③    経営会議などの内容や会議そのものをよりオープンにすべきである。
④    社長は社内に出来るだけいない方が良い。社員の仕事を信用してない。(責任と権限の分担)

(3)事業のアピール度

①    時代の変化を察知する能力が会社として欠如している。個人任せである。
②    取引先など巻き込んだ意見交換や情報収取が出来ていない。
③    言われたことの仕事だけをやる体質である。

(4)社員のやる気

①    お題目化している。心に響く内容ではない。トップの考えがよくわからない。
②    自分の価値観と会社の求めている価値観が違う。得意な知識や経験が生かされていない。
③    人を生かす重要性が会社にはない。
④    成果が公平に評価されていない。
⑤    組織間のコミュニケーションが不足しており負のスパイラルに落ち込みがちである。

(5)社会へのアピール度不足

①    対外的にアピールできる内容や表現になっていない。
②    オリジナリティーがないため目立たないし新鮮味がない。
③    地域社会との積極的な交流をしてない(イベントへの参加や会社見学や会議室の貸与など)
④    家族との会社の交流など積極的なアピールなどがない。
⑤    マスコミなどへの積極的な企業宣伝やアピールが不足。

(6)社会貢献度

①    社会貢献としての活動などが存在感が示せていない。(環境問題、足長オジサン、イベントへの参画等)
②    営業以外が真の顧客の要望などを知らない。世の中のニーズをより感じる組織がない。
③    売上や業績に追われ過ぎていて、自社や自分が仕事を通じて社会貢献をしている意識がない、持てない。

3.それらの解決策の内容

(1)企業の方向性

・経営者のメッセージを継続的に発信する
・企業の存在意義がわかり、自慢できる表現が出来る解り易い内容にする。
・経営が目指す方向性を明確に示せる内容する
・社会的な意義が表現されている。

(2)経営の在り方

・経営者の意識を理解できる内容である。
・社長の仕事を半減して理念を共有し権限と責任の移譲がわかる内容にする。
・管理部門を統合して風通しの良い組織運営を解るようにする。
・経営情報や社内環境(オフイス、工場)を常にオープン化して(webなど)見える化し共有できる。
・企業として目標を明確に示す(販売方針、売上・利益計画、新規事業計画、投資計画など)

(3)事業のアピール度

・何を目標とするかを社員と社外へ告知の徹底をする。
・事業として会社の夢を持てる内容が示されている。
・社内ベンチャーなどの意識高揚と実現性の可能性や取り組みが出来る内容である。
・中期事業などの資源や人材の集中度合いが全社員から見え社外にも解るようにする。

(4)社員のやる気

・高い意識を持った経営者と働ける喜びを感じさせる内容にする。
・理念を解り易い、覚え易い表現にして毎朝朝礼で朗読などして共有し士気を高める。
・家族や友人などの自慢の出来る内容である。
・職場での常に理念を話し合え、行動に結びつける場を作れる風土と幹部の意識がわかる内容か。
・理念に沿って自身のやりたいことや実現が出来ると意識が出来るか。

(5)社会への一般アピール度

・営業以外も全社員が自社の理念につて他社・顧客や友人、家族などに説明でき、自慢できる内容にする。
・地域や公開イベントなどに積極的に参加してアピールする。ブログなどでアピール。
・株主総会や顧客様との交流会などで積極的に説明アピールする。
・期待と目標達成度を半期ごとに評価し、繰り返し内容を発信できる組織や仕組み作りに役立つか。

(6)社会貢献度

・社会的な目的や役立つ方針が明記できているか。
・理念の共有と実現がいかに社会貢献に役立つ内容化が理解できる内容になっているか。
・企業の発展が結果的に世の為、人の為になることが意識できて働ける内容か。

結果的に時間不足で内容の詰めが一般論で終わってしまった。しかし、各企業とも現状の理念に対する意識が薄く、内容に不満を持っていると強く感じた。経営に関する意識の共有と実現に関する個人としての意義は残念ながらほとんどないという印象である。とにかく言われたことの実現に追われている現実が浮き彫りになった感である。今後の働き方に関して重要な基本が抜けていると思われる。
経営計画には「企業・経営理念」の共有とそれを支える「ビジョン」の実現と、それを推進する「価値観(バリュー)」の共有が重要である。それが企業の発展に繋がる筈である。

グループB

テーマ: 社員満足度、働き甲斐、社員の自立、コミュニケーション活性化への施策
コーディネータ: 坪本裕之

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1.テーマに関連して現場で実際に起こっている問題は?

・  コミュニケーションは、昔より充実している。
・  一方で、社員の雇用形態、職層が多様化している。
・  社員の価値観が多様化し、世代間でコミュニケーションがさらにとりにくくなっている。
・  上司の一言で、やる気を失う社員がいる。
・  上司が部下の育成に関心が無い。
・  ITリテラシーの度合いによって、コミュニケーションギャップが生じている。
・  コミュニケーションの定義が不明瞭。
・  「認めてほしい」欲求は普遍。
・  ポストが足りない。

2.新しい企業風土を作り出すには?

・  モチベーションをあげる施策を多数打ち出す。
・  トップに絶対的な権限を与え、責任を明確にする。
・  同時に、トップは聞き役になることが大切。

3.若い世代の社員に焦点をあて、彼らの満足度を高めるために必要なことは?

・  給与による生活の保障。
・  「承認欲求」を満たす。
・  「高収益な企業」でありつづけることの意義を理解させる。
・  若い世代の大胆な登用と評価。
・  企業内起業を認め、若手にチャンスを与える。(現実には、社内システムの利用が困難なこと、成功した場合のリターンがない点で、難しい)

グループC

テーマ: 人材開発:能力開発とモチベーション
コーディネータ: 小田毘古

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「能力開発とモチベーション」の観点で、それを阻害する問題点や課題を参加者から提起してもらった。それを5つのカテゴリに分類してまとめたものが下記である。

1.目標

・  企業の5年後、10年後の姿を明示
・  個々人の目標の明文化
・  変化する時代に対応する能力、人材の定義がない
・  モチベーション向上のポイントが人によって異なる

2.考え方

・  有益な情報を活用できず、人で活用しがち
・  多人数会議だと発言しない。アイデアが埋没しがち

3.教育・文化

・  教育する立場(指揮をとる立場)の人が、そういう経験をしていないし、やり方がわからない
・  教育(指揮)する立場の人が拒否反応を示す
・  若い世代は明確な指示がないと動けない。そういう教育を受けてきている

4.システム

・  日本独特の文化=比較が苦手=異なるものを受け入れるのが苦手
・  学びや得るものが狭く(少なく)なってしまっている→日々のやる気が減少
・  成果だけを気にするために、情報独り占め、ストレス
・  モチベーションを持って取り組める制度ではない
・  制度が効果的に働いていない
・  硬直的な労働システム・法律
・  硬直的な人事システム
・  日本的経営システム

5.Luck of 長期的視点

・  “寄らば大樹”働く人の依存性
・  働く人の意識、自立的でない
・  社員が自由に外に出られない
・  皆、意識が弱い
・  すぐに効果が見えない

以上をまとめると、次のような課題と方向性が必要ということになるのでは、なかろうか。

「日本における働き方の基本は、終身雇用制度に代表されるように、“寄らば大樹”の働く人の依存性がベースとなっている。それを支える経営・労働システムができあがっていて、それは働く人のモチベーション主体のシステムとはなっていない。これを変革するためには、個々人の働くことの目標の明文化、指示待ちから自立した行動への意識変革など、個人個人のレベルアップ、意識改革が必要であり、そのための教育やシステムの改革を通じて、企業の5年後、10年後の姿を示す必要がある。」

なお、グループ討議後、グループ発表により議論を締めくくった。

事後アンケートの回答(抜粋)

1.基調講演について率直な感想をお聞かせください。

・倉重会長のお話はいつも感銘を受けます。自社の経営の参考にしております。
・非常に勉強になりましたが、“HOW”の部分について聞きたかった。
・経営者として感じていた様々な悩みが一気に解決できる素晴しい講義でした。
・変化の方向性が明確に把握できた。
・現状としての世界(日本)の流れと、それにどう対応していけばよいかの概念が非常によく理解できた。

2.グループワークについての感想をお聞かせください。

・目標が時間の関係で足りなかった。
・大手企業の方が多くいらしていたので、巨大な組織ならではの問題をかかえていることがわかった。
・他社の人と話をすると、新しい発見がある。面白い意見も出て有意義だった。
・様々な層やキャラクターがおり、各人が抱える課題を共有できた。
・グループワークのやり方から教えてくださったので、有意義な議論になりました。

3.全体として、いかがでしたか。

・よい企画であったと思います。
・堅苦しくなく、雰囲気が良かった。
・大変、気づきが多くあった。
・緊張しましたが、大変楽しく聞くことができました。
・能動的学習と講義が組み合わされていて、本当に勉強になりました。

※関連サイト:
BPIA 企業活性化研究会 -日本企業の元気要因と働き方を探求する会-
こちら